意味
「末席を汚す(まっせきをけがす)」は、自分のような者が、その集まりや役目に加わらせてもらうことをへりくだって言う挨拶の言葉です。
会合の末席、つまり下座の席に本来はふさわしくない者が交じるという構えで、主賓やリーダー格としてではなく一員として加わる場面で使います。
- 末席(まっせき):宴会や会議で、身分の低い者が座るとされる下座の席。
語源・由来
「末席を汚す」は、日本の伝統的な宴席や会議の座席作法に由来する言い方です。
かつての座敷では身分や立場に応じて座る位置が決まっており、主賓や年長者は上座に、立場の軽い者ほど下座、つまり末席に座りました。
そこに「本来はふさわしくない自分が交じり、その席を汚すことになる」という言い回しを重ねることで、参加そのものを謙遜する挨拶語として定着しました。
使い方・例文
「末席を汚す」は、就任や会合への参加を述べるあらたまった挨拶の場面で使われます。
- 微力ながら、このたび理事会の末席を汚すことになった。
- 諸先輩方の前で恐縮だが、勉強会の末席を汚させていただく。
読み方と使い方の注意
読み方の間違い
「汚す」は、この言葉では「よごす」ではなく「けがす」と読みます。
「よごす」と読むと聞き手に意味が伝わりにくくなるため、就任のあいさつなどで声に出す際は読み方に注意が必要です。
使う場面の限定
「末席を汚す」は、あくまで一員として加わることをへりくだる言葉です。
主催者や代表として参加する場合には使いません。
類義語・関連語
「末席を汚す」と似て、集まりや仲間に加わることを表す言葉に「名を連ねる」があります。
ただし、へりくだる度合いには大きな違いがあります。
「末席を汚す」と「名を連ねる」の違い
| 語句 | ニュアンスの中心 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 末席を汚す (まっせきをけがす) | 自分の存在が場に不釣り合いだという謙遜 | 就任や参加の挨拶で自分を低める時 |
| 名を連ねる (なをつらねる) | 一員として名前が並ぶという事実の描写 | 謙遜を伴わず単に加入を述べる時 |
『太平記』にあった十四世紀の謙遜
「末席を汚す」という言い回しは、南北朝時代に成立した軍記物語『太平記』の第九巻にすでに見られます。
「其身愚蒙なりと雖ども、多年奉行の数に加はって、末席を汚す家なれば」という一節があります。
この一節は、六波羅方の武士が、合戦の場で敵に名乗りを上げる場面に出てきます。
武士は、自分の家は長年奉行の数に加わって末席を汚す家なので「筆とり」と侮られるだろうと前置きし、そのすぐ後で、先祖は利仁将軍の一族で代々武略を家業としてきたと家柄を名乗っています。
十四世紀には、この言い回しが自分の家を低めて言う前置きとしてすでに使われていたことがわかります。









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