「あれも欲しい、これもやりたい」と欲張った結果、結局どちらも手に入らず、時間や労力を無駄にしてしまった……。そんな苦い経験はありませんか?
「一石二鳥」を狙って失敗したとき、その残念な結果を戒める言葉として使われるのが、この虻蜂取らずです。
「虻蜂取らず」の意味・教訓
二つのものを同時に得ようとして、結局は両方とも失敗すること。
欲張って複数のことに手を出すと、中途半端になり成果が得られないという教訓。
- 虻(あぶ):ハエ目アブ科の昆虫。血を吸う種類もいる。
- 蜂(はち):ハチ目の昆虫。針を持つ。
「虻蜂取らず」の語源・由来
明確な出典となる書物はありませんが、古くから日本で使われている言葉です。
由来には諸説ありますが、その中でも「蜘蛛(クモ)」にまつわる説が有名です。
蜘蛛が巣にかかった虻と蜂の二匹を同時に捕まえようとして慌てた結果、網が破れてしまい、二匹とも逃がしてしまった(あるいは、どちらか迷っているうちに両方逃げられた)という様子から生まれたと言われています。
どちらも「刺す(噛む)」能力を持つ厄介な虫であることから、「危険や困難を冒してまで欲張る愚かさ」を強調しているとも解釈できます。
「虻蜂取らず」の使い方・例文
「欲張りすぎて失敗した」という状況や、「手を広げすぎることへの警告」として使われます。
ビジネスや学習において、方針が定まらず中途半端に終わった際によく用いられます。
例文
- 「本業をおろそかにして副業に精を出していたら、本業の評価が下がり、副業も続かなかった。まさに虻蜂取らずだ。」
- 「あれもこれもと新機能の開発を詰め込みすぎると、リリースが遅れる上にバグも増え、虻蜂取らずの結果になりかねない。」
- 「二つの資格試験に同時に合格しようとして、結局どちらの勉強も間に合わなかった。虻蜂取らずにならず、一つに絞るべきだった。」
「虻蜂取らず」の類義語・関連語
- 二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず):
二羽のウサギを同時に捕まえようとする者は、結局一羽も捕まえられない。「虻蜂取らず」とほぼ同じ意味だが、こちらは西洋のことわざに由来する。 - 花も折らず実も取らず(はなもおらずみもとらず):
両方を欲張った結果、どちらも得られないこと。 - 欲の熊鷹股裂ける(よくのくまたかまたさける):
二匹のイノシシを左右の足で一度に掴もうとした熊鷹が、イノシシが左右に分かれて走ったために股が裂けてしまったというたとえ。過度な欲張りを戒める言葉。
「虻蜂取らず」の対義語
「虻蜂取らず」の英語表現
Fall between two stools
- 直訳:二つの椅子の間に落ちる。
- 意味:「どっちつかずで失敗する」
- 解説:二つの椅子のどちらに座ろうか迷っているうちに、床に落ちてしまう様子から。二つの選択肢の間で中途半端になり、両方の機会を失うことを表します。
- 例文:
In trying to please both sides, he fell between two stools.
(双方を喜ばせようとして、彼は虻蜂取らずの結果になった。)
「虻蜂取らず」に関する豆知識
「二兎を追う者は一兎をも得ず」との違い
意味としてはほぼ同じですが、使われる文脈やニュアンスにわずかな違いがあります。
- 二兎を追う者は一兎をも得ず:
西洋由来(ローマの格言など)であり、世界的に通じる教訓。
「同じ種類のもの(ウサギ2羽)」を追うイメージから、目標が分散することへの戒めとして広く使われます。 - 虻蜂取らず:
日本独特の表現。「違う種類のもの(アブとハチ)」を追うイメージがあります。
また、アブもハチも人間に害をなす虫であることから、「厄介なことに手を出して自滅する」「慌てふためく」という滑稽さや愚かさが少し強調される傾向があります。
まとめ – 選択と集中の大切さ
「虻蜂取らず」は、私たちの心に潜む「欲」にブレーキをかけてくれる言葉です。
情報や選択肢があふれる現代では、あれもこれもと手を出したくなりますが、リソース(時間や体力)には限りがあります。
勇気を持ってターゲットを一つに絞ることこそが、確実な成果を手にする一番の近道と言えるでしょう。







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