「鬼に金棒」や、NHK朝ドラで話題になった「虎に翼」。
これらは「強いものがさらに強くなる」という意味の有名なことわざですが、実は動物界の王者・ライオン(獅子)にも、似たような言葉があるのをご存じでしょうか。
獅子に鰭(ひれ)。
陸の王者に、なんと魚の「ヒレ」がついているというのです。
想像すると少し奇妙な姿かもしれませんが、この言葉には「最強のさらに上を行く」凄まじい意味が込められています。
「獅子に鰭」の意味
強い力や優れた才能を持つものに、さらに別の能力が加わり、勢いや活躍の場が増すことのたとえです。
- 獅子(しし):百獣の王、ライオン。陸上で最強の力を持つ存在。
- 鰭(ひれ):魚が水中を泳ぐための器官。水中での自由な活動を可能にするもの。
陸の王者である獅子が、もしヒレを持って海まで泳げるようになったらどうでしょう。
陸上だけでなく水中までも支配することになり、文字通り「活動範囲に限界がない無敵の状態」になります。
「虎に翼」が「空」への進出なら、「獅子に鰭」は「海(水中)」への進出によって、強さが全方位に広がることを表しています。
「獅子に鰭」の由来
「虎に翼」のように中国の古典(『韓非子』)が出典というわけではなく、日本で生まれた表現だと考えられています。
「虎に翼」との対比
古くからある「虎に翼」が「陸の王者が空を制する」ことのたとえであるのに対し、もう一つの王者である獅子を用いて「陸の王者が海(水)をも制する」という対比のレトリックとして生まれた言葉です。
「鬼に金棒」や「虎に翼」に比べると知名度は劣りますが、陸海空の支配というスケールの大きさや、「翼」ではなくあえて「鰭」を選ぶ言葉のセンスが光る表現です。
「獅子に鰭」の使い方・例文
基本的には「鬼に金棒」と同じく、最強の組み合わせを称賛する場面で使われます。
特に、「活躍のフィールドが広がった」という文脈で使うと、原義(陸+海)のニュアンスが活きてきます。
例文
- 「国内シェアNo.1の我が社が、海外拠点を持つ企業と合併した。これぞ獅子に鰭、世界制覇も夢ではない。」
(陸=国内、海=海外という対比) - 「あの陸上選手が水泳のトレーニングを取り入れ、心肺機能が強化された。まさに獅子に鰭の進化だ。」
- 「ただでさえ強い彼に、あんな強力なサポーターがつくなんて、獅子に鰭だよ。」
「獅子に鰭」の類義語
「強いものがさらに強くなる」という意味のことわざは、動物や伝説の生き物を使ったものが多くあります。
- 鬼に金棒(おににかなぼう):
強い鬼に武器を持たせること。最も一般的で、誰にでも通じる表現。 - 虎に翼(とらにつばさ):
陸の王者である虎に翼をつけること。「獅子に鰭」と対をなす言葉。 - 弁慶に薙刀(べんけいになぎなた):
怪力無双の弁慶に、得意な薙刀を持たせること。 - 龍に雲(りゅうにくも):
龍が雲を得て天に昇るように、英雄が活躍の機会を得て本領を発揮すること。
「獅子に鰭」の対義語
強い力を持っているのに、それを活かせない状況や、無意味な強化を表す言葉です。
- 猫に小判(ねこにこばん):
価値のあるものを与えても、相手がその価値を理解できず役に立たないこと。 - 宝の持ち腐れ(たからのもちぐされ):
優れた才能や道具を持っているのに、活用できずにいること。 - 蛇足(だそく):
蛇の絵に足を描き足すこと。余計なものを付け加えて、かえって価値を落とすこと。
「獅子に鰭」は「良い強化」ですが、「蛇に足」は「悪い強化(改悪)」です。
「獅子に鰭」の英語表現
英語には「ライオンにヒレ」という直訳的な表現はありませんが、同様のニュアンスを持つ言葉は存在します。
Double threat
- 意味:「二つの脅威」「二刀流」
- 解説:例えば「歌も歌えて演技もできる俳優」のように、二つの異なる分野で才能を発揮する人を指します。「陸も海もいける獅子」のニュアンスに近い現代的な表現です。
An unstoppable force
- 意味:「止められない力」
- 解説:勢いがつきすぎて誰も止められない状態をシンプルに表す言葉です。
「獅子に鰭」に関する豆知識
「獅子に翼」もある?
実は、「獅子に鰭」の変形バージョンとして、「獅子に翼」と言うこともあります。
これは西洋の紋章や神話に登場する「有翼の獅子(グリフォンや聖マルコの獅子)」のイメージと混同されたり、「虎に翼」につられたりして使われる表現です。
意味は同じく「最強」を表しますが、日本のことわざとしては、あえて「鰭」と言うことで「虎(空)」との差別化を図った「獅子に鰭」の方が、粋(いき)な表現と言えるかもしれません。

まとめ – 陸も海も制する強さ
獅子に鰭は、陸の王者が海までも制覇してしまうような、圧倒的な強さと活動範囲の広さを表す言葉です。
「鬼に金棒」と言いそうになったとき、もしその状況が「新しい分野への進出」や「多才な能力の獲得」を含んでいるなら、あえて「それは獅子に鰭だね」と言ってみてはいかがでしょうか。
言葉の選び方一つで、あなたの知性にも「鰭」や「翼」がつくかもしれません。









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