「宝くじで高額当選したのに、数年後には一文無しになっていた」
「親から受け継いだ会社なのに、放漫経営で資産を食いつぶしてしまった」。
資源やお金に限りがあることを忘れ、まるで湧き水のように無限にあるかのように消費してしまう様子を、
湯水のごとく使うと言います。日本の風土が色濃く反映された表現です。
「湯水のごとく使う」の意味
金銭や財産などを、惜しげもなく大量に使うこと。また、無駄に費やすこと。
蛇口をひねれば水やお湯がいくらでも出てくるように、対象を「尽きることのないもの」「価値の低いもの(減っても惜しくないもの)」として扱い、後先考えずに消費する様子を指します。
単に「たくさん使う」だけでなく、多くの場合「大切にしていない」「浪費している」「計画性がない」という批判的なニュアンスを含んで使われます。
- 湯水(ゆみず):湯と水。ありふれていて、惜しくないもののたとえ。
- ごとく(如く):〜のように。
「湯水のごとく使う」の語源・由来
この言葉は、日本が「水資源に恵まれた国」であることに由来しています。
日本ならではの感覚
古くから日本では、井戸を掘れば良質な水が湧き、川も多く、水に困ることは比較的稀でした。
そのため、日本人にとって水は「自然の恵みとして無限に手に入るもの」「安価(タダ同然)なもの」という感覚が根付いていました。
ここから、「湯や水を使うかのように、ためらいなく物を消費する」という比喩が生まれました。
現代とのギャップ
現代では水道代もガス代もかかるため、「湯水」は決してタダではありません。
しかし、言葉としての「湯水のごとく」には、かつての「無尽蔵で惜しくないもの」というイメージがそのまま残っています。
逆に、水が金よりも貴重な砂漠気候の国々などでは、そもそも成立しにくい(あるいは「非常に贅沢で素晴らしい」という逆の意味になりうる)表現と言えます。
「湯水のごとく使う」の使い方・例文
主に、「浪費」「放漫財政」「遺産の食いつぶし」などを批判する文脈で使われます。
「金に糸目をつけない」が「目的のための投資」というポジティブな意味を含むことがあるのに対し、
「湯水のごとく」は「垂れ流し」というネガティブな意味で使われることが一般的です。
例文
- 「彼は親の遺産を湯水のごとく使い、わずか数年で破産してしまった。」
- 「バブル時代、多くの日本企業が交際費を湯水のごとく使っていたという。」
- 「血税を湯水のごとく使うような放漫な公共事業は、直ちに見直すべきだ。」
メディアでの使用例
ニュースでは、国の予算の使い方や、経営者の公私混同を批判する際によく用いられます。
「かつてのワンマン社長は、会社の金を湯水のごとく私的流用していた疑いがある。」
このように、資源の枯渇(倒産や破綻)を予見させるような、危うい状況の描写として適しています。
「湯水のごとく使う」の誤用・注意点
「投資」の意味では使いにくい
「将来のために教育費を湯水のごとく使う」とはあまり言いません。
この場合、「惜しみなくつぎ込む」「金に糸目をつけない」とする方が適切です。
「湯水のごとく」には「価値のないものとして扱う(減っても気にしない)」というニュアンスがあるため、価値ある投資に使うと「無駄遣い」と受け取られる恐れがあります。
節水を呼びかける場面ではNG
当たり前ですが、節水を呼びかけるポスターなどで「湯水のごとく大切に使いましょう」と言うと、意味が矛盾してしまいます。
「湯水」自体が「粗末に扱われるもの」の比喩であるため、「大切に」という言葉とは相性が悪いのです。
「湯水のごとく使う」の類義語・関連語
- 金に糸目をつけない(かねにいとめをつけない):
制限を設けず、豪快にお金を使うこと。目的意識がある場合にも使われる点が「湯水」と異なる。 - 散財(さんざい):
不必要に金銭を使うこと。 - 乱費(らんぴ):
むやみに金銭や物を使うこと。「浪費」よりも乱雑なニュアンス。 - 放蕩(ほうとう):
酒や女遊びにふけって、金銭を使い果たすこと。「放蕩息子」などと使う。
「湯水のごとく使う」の対義語
- 爪に火をともす(つめにひをともす):
明かり代さえ惜しんで爪を燃やすほど、極端に倹約すること。 - 一銭を笑う者は一銭に泣く(いっせんをわらうものはいっせんになく):
わずかな金額でも粗末にする者は、やがてそのわずかな金に困ることになるという戒め。 - 吝嗇(りんしょく):
極度に物惜しみをすること。けち。
「湯水のごとく使う」の英語表現
英語圏にも、水を使った非常によく似たイディオムが存在します。
spend money like water
- 直訳:水のように金を使う。
- 意味:「湯水のごとく金を使う」「浪費する」
- 解説:英語圏でも、水は「指の間から流れ去っていくもの」「留めておけないもの」の象徴であり、無計画な出費を表す際に使われます。
- 例文:
He spends money like water.
(彼は湯水のごとく金を使う。)
burn a hole in one’s pocket
- 直訳:ポケットに穴をあける。
- 意味:「金を使いたくてうずうずする」「あればあるだけ使ってしまう」
- 解説:お金が熱を持ってポケットを焼き切り、外に出ていこうとするイメージです。こらえ性のない浪費癖を表します。
「湯水のごとく使う」に関する豆知識
水を「タダ」と見るか「流れる」と見るか
日本の「湯水のごとく」と英語の “like water” は、結果として同じ「浪費」を指しますが、着眼点が少し異なります。
日本の場合は「豊富にあって惜しくない(価値が低い)」という「供給過多」の視点が強いのに対し、
英語の場合は「手元に留まらず流れていく」という「流動性」の視点が強いと言われています。
どちらにせよ、大切なお金があっという間に消えてしまう状況を、身近な液体である「水」で表現するのは、洋の東西を問わず共通の感覚のようです。
まとめ
湯水のごとく使うとは、恵まれた環境ゆえの「油断」が生んだ、浪費を戒めることわざです。
かつては無限にあると思われた水も、環境問題が叫ばれる現代では貴重な資源です。
同様に、お金や時間、そして人の好意も、決して無限に湧いてくるものではありません。
「湯水のごとく」使っていては、いつか必ず枯渇する時が訪れます。
あることが当たり前だと思わず、蛇口を締めるような慎重さを持ち続けたいものです。







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