味噌をつける

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ことわざ 慣用句
味噌をつける
(みそをつける)

6文字の言葉」から始まる言葉

大事な試験の当日に寝坊をしてしまったり、自信満々で披露した特技で初歩的なミスをしてしまったり。
順調に進んでいたはずの物事が、一つの失敗によって台無しになり、バツの悪い思いをすることがあります。
そんな状況を、「味噌をつける」(みそをつける)と言います。

それまでの努力や周囲からの評判が、たった一つの汚点によって損なわれてしまう。
そんな、取り返しのつかない失敗をして面目を失った時の苦い心理を描写する言葉です。

意味

「味噌をつける」とは、失敗して面目を失うこと、あるいは物事を台無しにすることを意味します。
単なるミスではなく、その失敗によって自分の名誉や評価に傷がつくというニュアンスを含んでいます。

「味噌をつける」の構成要素:

  • 味噌(みそ):
    日本の食卓に欠かせない調味料。ここでは「失敗の代名詞」として機能している。
  • つける
    付着させる、塗る。

語源・由来

「味噌をつける」の由来には諸説ありますが、かつての民間療法や料理の失敗に基づいたものが有力です。

かつて、軽い火傷をした際に味噌を塗ると治るという民間療法がありました。
しかし、実際には治療効果がないばかりか、傷口を汚して見た目を悪くするだけになることが多かったようです。
この「火傷をして(=失敗して)味噌を塗る(=みっともない姿を晒す)」様子が、面目を失う意味に転じました。

また、料理において味噌は非常に味の強い調味料です。
隠し味のつもりで入れた味噌が、素材の良さをすべて消して料理を台無しにしてしまうことから、「余計なことをして失敗する」という意味になったという説もあります。

いずれも、江戸時代の庶民の暮らしの中から生まれた言葉であり、『江戸いろはかるた』の読み札に採用されたことで広く定着しました。

使い方・例文

「味噌をつける」は、個人のうっかりミスから、組織の評判に関わるような大きな失態まで、幅広く使われます。

例文

  • 最終回でエラーをしてしまい、せっかくの完封勝利に「味噌をつける」形となった。
  • 「余計な口出しをして、この計画に「味噌をつける」ことだけは避けてくれ」と釘を刺された。
  • 期待の新製品だったが、発売直後の不具合でブランドイメージに「味噌をつける」結果となった。
  • 弟は、自慢の工作を最後の色塗りで失敗して味噌をつけた

文学作品・メディアでの使用例

夏目漱石をはじめ、多くの文豪が「失敗による後悔」を描く際にこの言葉を用いています。

『三四郎』(夏目漱石)

主人公の三四郎が、ある場面で自分の行動がその場の良い雰囲気を壊してしまったと悔やむシーンで登場します。

折角(せっかく)の好い処へ味噌を付けた様な気がした。

誤用・注意点

「味噌をつける」は、相手の失態や恥を強調する表現であるため、他人の失敗に対して直接使う場合は注意が必要です。

特に目上の人に対して「部長、味噌をつけましたね」などと使うのは、非常に無礼にあたります。
基本的には、自分の失敗を自嘲気味に語るか、客観的な状況(ニュースや第三者の話)を述べる際に留めるのが無難です。

また、「鼻につく(鼻持ちならない)」や「鼻にかける(自慢する)」など、他の顔のパーツにまつわる慣用句と混同しないようにしましょう。

類義語・関連語

「味噌をつける」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 顔に泥を塗る(かおにどろをぬる):
    相手の名誉を汚し、恥をかかせること。
  • 汚点を残す(おてんをのこす):
    それまでの名声や経歴に、消し去ることのできない恥ずべき傷をつけること。
  • 面目を失う(めんぼくをうしなう):
    世間に対する顔が立たなくなり、名誉を損なうこと。
  • 瑕瑾を留める(かきんをとどめる):
    完璧なものに、わずかな欠点やキズを作ってしまうこと。

対義語

「味噌をつける」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 箔が付く(はくがつく):
    評価や貫禄が高まり、価値が増すこと。
  • 面目を施す(めんぼくをほどこす):
    見事にやり遂げて、周囲からの評価や名誉を高めること。
  • 鼻が高い(はながたかい):
    得意満面で、誇らしい気持ちであること。

英語表現

「味噌をつける」を英語で表現する場合、失敗の性質によって適切なイディオムを選びます。

To blot one’s copybook

  • 意味:「名声に傷をつける、汚点を残す」
  • 解説:直訳は「習字帳にインクの染みを作る」。長年の完璧な記録を一度のミスで汚すニュアンスで、非常に近い表現です。
  • 例文:
    He blotted his copybook by making a serious mistake in the final stage.
    (彼は最終段階で重大なミスを犯し、味噌をつけた。)

To lose face

  • 意味:「面目を失う、メンツを潰す」
  • 解説:社会的な地位や評判を損なうという、「味噌をつける」の核心的な意味をストレートに伝える表現です。
  • 例文:
    I don’t want to lose face in front of my subordinates.
    (部下の前で味噌をつけたくはない。)

豆知識:江戸の味噌事情

江戸時代、味噌は単なる調味料ではなく、その家の「品格」を示すものでした。
「手前味噌」という言葉があるように、各家庭で味噌を自作しており、その出来栄えで主婦の腕が判断されることすらあったのです。

そんな大切な味噌を「変な場所に塗る」あるいは「味を損なう」ことは、生活の基盤を汚すほどの重い失態として捉えられていました。
現代よりも「家」や「体面」が重視されていた時代だからこそ、この言葉は強い実感を伴って広まったと言えるでしょう。

まとめ

「味噌をつける」という言葉は、私たちの日常に潜む「失敗の苦さ」を、身近な味噌に例えて表現した、日本人らしい知恵の詰まった慣用句です。
一度つけた味噌を拭い去るのは容易ではありませんが、その失敗を教訓にすることで、次に作る「味噌」をより味わい深いものにしていけるはずです。

言葉の本来の意味を正しく理解し、自らの行動を律する指標として活かしたいものです。

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