「弘法大師(空海)」に関連することわざ

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弘法大師(空海) 【特集】ことわざ・慣用句・四字熟語

仕事で使う道具の質を言い訳にしたくなったときや、完璧だと思っていた人の意外なミスに驚いたとき。
そんな日常のふとした瞬間に、私たちはよく「弘法大師」(こうぼうだいし)の名を口にします。

平安時代、日本文化のあらゆる分野に巨大な足跡を残した空海。
その圧倒的な実力と、全国各地に遺された人間味あふれる伝説は、長い年月を経て私たちの日常に寄り添う知恵や教訓として定着しました。

弘法大師(空海)とは

弘法大師修行像
弘法大師修行像

弘法大師(空海)は、平安時代初期に真言宗を拓いた僧侶ですが、その足跡は宗教の域にとどまりません。
774年に現在の香川県(当時の讃岐国)で生まれ、若くして厳しい修行に打ち込んだ後、遣唐使として中国(唐)へ渡りました。
そこで当時最新の思想・文化であった密教をわずか2年という驚異的な速さで習得し、日本へ持ち帰りました。

「空海」と「弘法大師」という二つの呼び名があるのは、一方が生前の実名で、もう一方が没後に贈られた特別な名前だからです。

  • 空海
    真言宗を拓いた僧侶としての本名です。歴史的な事実や、彼自身の行動について語る際に適しています。
  • 弘法大師
    亡くなってから約80年後、醍醐天皇からその功績を讃えて贈られた「諡号(しごう)」という贈り名です。ことわざや信仰の文脈では、この呼び名が一般的です。

彼の凄さは、現代でいう「万能の天才」ぶりにあります。

  • 書の達人
    後述する「三筆」の一人として知られ、その筆跡にまつわる数々の伝説がことわざの源流となりました。
  • 土木・技術の専門家
    地元の満濃池(まんのういけ)の改修を指揮し、当時の最先端技術を駆使して災害から人々を救うなど、実務家としても超人的な手腕を発揮しました。
  • 教育の先駆者
    身分に関わらず誰でも学べる日本初の私立学校「綜藝種智院(しゅげいしゅちいん)」を設立し、教育の門戸を広げました。
  • 文化・信仰の象徴
    四国八十八ヶ所巡礼(お遍路)の基礎を築いたともいわれ、没後1200年を過ぎた今もなお「お大師さま」として全国で親しまれています。

弘法大師(空海)」に関連する ことわざ

弘法筆を選ばず(こうぼうふでをえらばず)

本当の達人は道具の良し悪しに左右されることなく、どのような道具であっても見事な成果を上げることができるという意味。

空海がいかなる質の悪い筆であっても常に素晴らしい書を書いたという伝説に基づいています。
自分の未熟さを環境や道具のせいにしようとする甘えを戒め、自らの腕を磨くことの大切さを説く教訓として使われます。

弘法にも筆の誤り(こうぼうにもふでのあやまり)

どれほど優れた才能を持つ人であっても、時には失敗や間違いをすることがあるという意味。

平安京の応天門に掲げる額を書いた際、空海が「応」の字の一画目を書き忘れてしまったという伝説が由来です。
掲げられた後に間違いに気づいた空海が、下から筆を投げつけて点を書き加えたという逸話もセットで語られます。誰にでもミスはあるという慰めや、油断への戒めとして使われます。

書家としての称号・呼称

三筆(さんぴつ)

日本の書道史上、平安時代初期に最も優れていたとされる3人の達人のこと。

空海(弘法大師)、嵯峨天皇、橘逸勢の3人を指します。
空海はその筆頭として挙げられることが多く、彼が日本の文字文化における絶対的な象徴であることを示す言葉です。

五筆和尚(ごひつおしょう)

両手、両足、さらに口に筆をくわえて、同時に五つの文字を書き上げたという伝説に基づく空海の呼び名。

唐に渡った際、時の皇帝からその卓越した技術を称えて授けられたとされる称号です。
現実を超越した圧倒的な技術力や多才さを象徴する言葉として知られています。

伝説・信仰にまつわる用語

同行二人(どうぎょうににん)

お遍路などの巡礼において、一人で歩いていても常に弘法大師がそばにいて、共に歩んでくれているという意味。

空海が今もなお高野山で瞑想を続け、人々を救い続けているという信仰に基づいています。
決して一人ではないという精神的な支えや、巡礼者同士の連帯感を象徴する言葉です。

いろは歌(いろはうた)

仮名を重複させずに作られた、仏教的な無常観を歌った詩。

古くから空海の作であるという伝説(弘法大師説)が広く信じられてきました。
言語学的には後の時代の成立とされていますが、日本の文字・教育文化の根幹に弘法大師の名が刻まれていることを示す重要な用語です。

弘法水(こうぼうみず)

弘法大師が杖で地面を突いたところ、そこから清らかな水が湧き出たという伝説の湧水。

全国各地に「弘法水」や「弘法清水」と呼ばれる場所があり、彼が修行の旅の途中で人々の苦しみを救ったという慈悲の心の象徴として、今も大切に語り継がれています。

弘法麦(こうぼうまぎ)

空海が旅の途中で広めた、あるいは彼の杖が根付いたとされる伝説のある麦。

弘法水と同様に、空海が各地に農耕や食文化の知恵をもたらしたという信仰から生まれた呼称です。
人々の生活を支える存在として、弘法の名が庶民の間に浸透していた証と言えます。

身代わり大師(みがわりだいし)

信仰する人の苦しみや災厄を、弘法大師が自ら引き受けて守ってくれるという信仰上の呼び名。

災難にあった際に「大師様が身代わりになってくださった」と解釈するなど、精神的な救いとしての言葉です。

弘法市(こうぼういち)

弘法大師の命日にちなみ、寺院の境内などで開かれる縁日。

特に京都の東寺で毎月21日に開かれるものが有名で、親しみを込めて「弘法さん」とも呼ばれます。
単なる言葉としてだけでなく、文化や風習として現代に息づく弘法大師の影響力を示す用語です。

まとめ

弘法大師にまつわる言葉は、今の私たちの仕事や生活に役立つ具体的な視点を与えてくれます。

「弘法筆を選ばず」が説くのは、環境や道具のせいにせず、まずは自分の腕を磨き続ける姿勢です。一方で「弘法も筆の誤り」は、どんな達人でもミスは避けられないという、失敗に対する寛容さを教えてくれます。

成長を目指す厳しさと、ミスを認める心の余裕。この二つのバランスを意識することが、日々の課題を乗り越えるための現実的なヒントになるはずです。

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