米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる

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ことわざ
米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる
(こめくったいぬがたたかれずにぬかくったいぬがたたかれる)

27文字の言葉こ・ご」から始まる言葉

世の中には、大きな悪事を働いた張本人がうまく逃げおおせ、それに付随した小悪党や、あるいは無関係な立場の弱い者が代わりに責任を負わされるという理不尽な出来事があります。

「なんであいつだけが得をして、自分が怒られるんだ」と憤りたくなるような状況を、昔の人は「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」(こめくったいぬがたたかれずにぬかくったいぬがたたかれる)という、少し皮肉の効いた長い言葉で表現しました。

意味

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」とは、要領のいい大悪人は処罰を免れ、要領の悪い小悪人ばかりがひどい目に遭うことのたとえです。

本来なら、貴重な「米」を盗み食いした犬こそが厳しく罰せられるべきですが、そうした犬はズル賢くて素早く逃げてしまいます。
一方で、価値の低い「糠(ぬか)」をあさっていたような愚鈍な犬、あるいは逃げ遅れた犬が捕まって、米を食った犬の分まで叩かれてしまうという、社会の不条理や矛盾を風刺しています。

語源・由来

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」の由来は、昔の日本の農村風景や生活習慣における観察に基づいていると言われています。

かつて、精米したての白米は非常に貴重な食料でした。
一方で、精米の過程で出る「糠」は、漬物床や家畜の飼料として使われる比較的安価なものでした。

このことわざは、文字通り「犬」の行動から生まれたと考えられます。
ご馳走である米を盗み食いするような犬は、普段から抜け目がなく、人間が来る気配を察知するとサッと逃げ出してしまいます。
しかし、その後にやってきて残りの糠を舐めていたり、あるいは近くでうろうろしていた要領の悪い犬が、人間に見つかり「こいつが犯人だ」と勘違いされたり、八つ当たりで叩かれてしまうのです。

この情景が、巨悪が逃げて小悪が捕まる人間社会の縮図として重ね合わされ、定着したとされています。

使い方・例文

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」は、主に納得のいかない処罰や、責任の所在が不公平である状況に対して、不満や諦めを込めて使われます。

かつては「要領の良し悪し」を説く文脈でも使われましたが、現代では主に組織的な不正における「トカゲの尻尾切り」のような、権力構造の理不尽さを批判する際によく用いられます。

例文

  • 政治家の汚職事件で秘書だけが逮捕されたニュースを見て、父は「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」とはまさにこのことだな」と嘆いた。
  • 主犯格の生徒たちは要領よく逃げ出し、少し手伝っただけの彼が先生に一番怒られている。
    これでは「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」だ。
  • 会社の不祥事で、指示を出した上層部は責任を取らず、現場の担当者だけが処分されるなんて、「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」の典型例ですよ。

類義語・関連語

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 大盗は誅せず(たいとうはちゅうせず):
    国を盗むような大泥棒は処罰されず、小泥棒ばかりが処刑されるということ。
  • 網呑舟の魚を漏らす(あみどんしゅうのうおをもらす):
    法網が粗く、舟を丸呑みするような大魚(大悪人)を逃してしまうこと。
  • 皿嘗めた猫が科を負う(さらなめたねこがとがをおう):
    魚を盗んだ猫は逃げてしまい、あとで皿をなめただけの猫が罪を負わされること。
  • 正直者が馬鹿を見る
    狡賢い者が得をして、ルールを守る正直な人が損をする世の中の理不尽さ。

対義語

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):
    天の張る網は、目は粗いが、悪人を漏らすことなく必ず捕らえる。悪事は決して栄えないという戒め。
  • 悪事千里を走る(あくじせんりをはしる):
    悪い行いや噂はすぐに世間に知れ渡るということ。隠し通すことはできないという意味で対照的。

英語表現

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」を英語で表現する場合、以下のようなことわざがあります。

Little thieves are hanged, but great ones escape.

  • 意味:「小泥棒は絞首刑になるが、大泥棒は逃げのびる」
  • 解説:日本のことわざと全く同じ発想で、洋の東西を問わず、社会にはこうした不条理が存在することを示しています。

現代社会と「トカゲの尻尾切り」

この言葉は、現代のビジネスや政治の世界でよく使われる「トカゲの尻尾切り」という表現と非常に近い構造を持っています。

本体(上層部や主犯格)は生き延びるために、尻尾(下位の者や実行犯)を切り捨てて逃走します。
「糠食った犬」もまた、ある意味では「米食った犬」が逃げるための囮(おとり)やスケープゴートにされているとも言えるでしょう。

単に「運が悪かった」で済ませるのではなく、なぜそのような不公平が起きるのか、その背景にある力関係やシステムに目を向けるきっかけを与えてくれる言葉です。

まとめ

「米食った犬が叩かれずに糠食った犬が叩かれる」は、巨悪が見逃され、小悪や弱者が罰を受ける世の中の不条理を鋭く突いたことわざです。

長い言葉ですが、その分、情景が目に浮かぶような説得力を持っています。
ニュースや職場で理不尽な責任転嫁を目の当たりにしたとき、この言葉を思い出すことで、状況を冷静に分析し、やるせない気持ちを少し客観的に捉えることができることでしょう。

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