休日家族でこれから出かけようとしている時に、普段は何もしない人が突然大掃除を始めて周囲を困惑させる。
日頃の怠慢を棚に上げ、皆が休む時に限って見当違いな努力をする様子を、
「怠け者の節句働き」(なまけもののせっくばたらき)と言います。
意味・教訓
「怠け者の節句働き」とは、普段は怠けている者が、世間の人々が休む祝日(節句)に限って、せっせと働くことを指します。
また、そこから転じて、物事を行うタイミングが極めて悪く、肝心な時に何もしない一方で、不必要な時に慌てて動き出す要領の悪さを批判したり、自嘲したりする際に用いられる教訓です。
語源・由来
「怠け者の節句働き」の由来は、日本の伝統的な暦における「節句」の習慣にあります。
江戸時代以前、節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽の五節句など)は、仕事を休んでお祝いをする大切な休息日でした。
普段はやるべき仕事を放り出している怠け者が、よりによって皆が楽しんで休んでいる日に限って忙しそうに働きだす様子は、周囲から見れば滑稽で場違いなものでした。
この言葉は、単に「休みを返上して働く」ことを褒めるのではなく、日頃の段取りが悪いために時期外れの苦労をしているという皮肉を込めて使われるようになりました。
なお、この言葉は「江戸いろはかるた」の読み札の一つとして採用されたことで、庶民の間にも広く定着しました。
使い方・例文
「怠け者の節句働き」は、普段の義務を怠り、場違いなタイミングで不必要な努力をしたり、手遅れになってから慌てたりする場面で使われます。
相手への皮肉だけでなく、「自分は要領が悪い」と反省する文脈でも見られます。
例文
- 普段は手伝いを一切しない兄が、家族旅行の当日に庭の草むしりを始めるのは怠け者の節句働きだ。
- テストが終わった翌日から猛烈に予習を始めるなんて、まさに怠け者の節句働きだね。
- 繁忙期には有給休暇を取り、閑散期になってから残業代稼ぎに精を出すのは怠け者の節句働きと言わざるを得ない。
誤用・注意点
この言葉は、純粋に「休日に熱心に働く人」を称賛する言葉ではありません。
そこには必ず「タイミングの悪さ」や「日頃の怠慢」に対する皮肉が伴います。
そのため、休日返上で会社のために尽くしている上司や同僚に対して、「〇〇さんは「怠け者の節句働き」ですね」と言うのは、「あなたは普段怠けていて要領が悪いですね」と侮辱することになるため、非常に失礼にあたります。
類義語・関連語
「怠け者の節句働き」と似た意味を持つ言葉には、時期を逸した行動や要領の悪さを表すものが多くあります。
- 泥棒を捕らえて縄をなう(どろぼうをとらえてなわをなう):
事態が起きてから慌てて準備を始めることのたとえ。 - 後の祭り(あとのまつり):
時期を逃してしまい、後から悔やんでも手遅れであること。 - 六日の菖蒲、十日の菊(むいかのあやめ、とおかのきく):
節句の翌日に用意しても役に立たないことから、時機に遅れて価値がなくなったもののたとえ。
対義語
「怠け者の節句働き」とは対照的な意味を持つ言葉は、事前の準備や適切なタイミングでの行動を説くものです。
- 段取り八分(だんどりはちぶ):
仕事は準備さえしっかりしていれば、その時点で八割は終わったも同然であるということ。 - 好機逸すべからず(こうきいっすべからず):
絶好の機会が来たら、迷わずつかみ取るべきであるという教訓。 - 用意周到(よういしゅうとう):
準備が隅々まで行き届いており、手抜かりがない様子。
英語表現
「怠け者の節句働き」を英語で表現する場合、タイミングの遅れや準備不足を指摘するイディオムが適しています。
a day late and a dollar short
「1日遅くて1ドル足りない」
何かを行うタイミングが少しずつ遅く、かつ不十分で役に立たない状況を指します。
- 例文:
Starting to study after the exam is a day late and a dollar short.
試験の後に勉強を始めるのは、時機を逸した無駄な骨折りだ。
lock the stable door after the horse has bolted
「馬が逃げた後に厩舎の戸に鍵をかける」
大切なものが失われた後や、手遅れになってから慌てて対策を講じる様子を揶揄する表現です。
補足トリビア:社会のリズムへの配慮
この言葉にある「節句働き」という表現は、かつての農業中心の生活において、単なる個人の要領の悪さ以上の意味を持っていました。
節句の日は「神様をお迎えする日」や「共同体の休息日」であり、皆が休んでいる中で一人だけ働くことは、地域の和を乱す行為や神様への不敬として戒められていた側面があります。
「怠け者の節句働き」という言葉には、自分勝手な都合で動くのではなく、社会全体の流れやリズムに合わせることの重要性という視点も含まれていたと言えるかもしれません。
まとめ
「怠け者の節句働き」は、普段の怠慢を棚に上げ、不適切なタイミングで働きだす滑稽さを教訓とした言葉です。
どれほど一生懸命に動いたとしても、時機を外してしまえば、それは周囲に迷惑をかけたり、無駄な努力に終わったりすることが多いものです。
この言葉は、現代を生きる私たちにとっても、日頃の備えと「今、何をすべきか」という状況判断の大切さを、どこかユーモラスに語りかけていると言えることでしょう。






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