意味
「冠履転倒(かんりてんとう)」とは、地位や値打ちの上と下の順序が逆さまになって乱れるという意味です。
「冠履顛倒」とも書きます。
語源・由来
この言葉は、頭にのせるはずの冠と、足にはくはずの履(くつ)の、本来の置き場所が逆さまになる、という意味から生まれました。
上にあるべきものが下に来るさまを、地位や値打ちの順序の乱れにたとえています。
使い方・例文
「冠履転倒する」の形で動詞としても使います。
- 入社したばかりの新人が部長に指図するとは、冠履転倒もいいところだ。
- 包装に予算をかけすぎて中身が安物では、冠履転倒だと言われても仕方ない。
- 物語の中で、家来が主君を城から追い出す冠履転倒した場面に息をのんだ。
小説での使用例
夏目漱石の小説『それから』(1909年)に、「冠履顛倒」の表記で出てきます。
主人公の代助は、歩きたいから歩き、考えたいから考えるというように、行動そのものを目的とする考え方をしています。
その代助が、行動の途中でその意味を疑い出してしまう状態を説明した一節です。
彼の行為の中途に於て、何の為と云う、冠履顛倒の疑を起させるのは、アンニュイに外ならなかったからである。
代助は、こうした疑いを生む気持ちの状態をアンニュイ(= 気持ちが満たされない、けだるい退屈)と名づけています。
類義語・関連語
あるべき順序が逆さまになっている、という点で共通する言葉です。
- 本末転倒(ほんまつてんとう):
根本の大切なことと、末端のささいなことを取り違えること。 - 冠履倒置(かんりとうち):
冠と履を逆さまに置くという組み立てで、冠履転倒とほぼ同じ意味の語。
「冠履転倒」と「本末転倒」の違い
どちらも順序が逆さまになる点で似ています。
「冠履転倒」は地位や値打ちの上下が入れ替わることを言い、「本末転倒」は大切なこととささいなことを取り違えることを言います。

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