意味
「玩物喪志」は、もてあそぶものに気持ちを奪われて、果たすべき使命や向上心を失うことを意味する四字熟語です。
地位や責任のある人物が、珍しい品や趣味に溺れて政務や学問をなおざりにする様子を戒める場面で使われます。
- 玩物(がんぶつ):物をもてあそぶこと。
- 喪志(そうし):志を失うこと。
語源・由来
「玩物喪志」は、中国の古典『書経』の「旅獒(りょごう)」という篇に登場します。
周の武王が殷を討ち滅ぼした後、西方の国から珍しい犬が献上され、武王はこれを喜んで手もとに置こうとしました。
これを見た重臣の召公は、「人を玩べば徳を喪い、物を玩べば志を喪う」と武王を諫めたと伝えられています。
戦いに勝った直後という、気の緩みやすい場面で発せられた戒めであることが、この言葉に重みを与えています。
使い方・例文
「玩物喪志」は、趣味や興味の対象に夢中になって本業や目的を見失う状況を戒める場面で使われます。
- 骨董品集めに給料をつぎ込むとは、まさに玩物喪志である。
- 新製品の開発に夢中で本業を疎かにするのは玩物喪志の典型だ。
誤用・注意点
「玩物喪志」は、趣味に打ち込むこと自体を否定する言葉ではありません。
本来果たすべき仕事や学業をなおざりにしてしまう場合に限って使う戒めの言葉です。
類義語・関連語
「玩物喪志」と同じく、本来の目的を見失う状況を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 本末転倒(ほんまつてんとう):
物事の重要な部分とささいな部分を取り違え、目的と手段が逆になること。
「玩物喪志」と「本末転倒」の違い
どちらも本来の目的からそれる様子を表しますが、焦点が異なります。
| 語句 | 焦点 |
|---|---|
| 玩物喪志 (がんぶつそうし) | 目先の物事への熱中で、志そのものを失うこと |
| 本末転倒 (ほんまつてんとう) | 目的と手段の順序を取り違えること |
書経に残るもう半分の戒め
「玩物喪志」のもとになった一文には、実はもう半分の戒めが続いています。
「玩人喪徳(人を玩べば徳を喪う)」という句で、物ではなく人をもてあそぶ場合の戒めです。
気に入った相手を思うままに扱おうとすると、今度は自分の徳、つまり人格の重みを失うという意味です。
一つの文の中で「物への執着」と「人への執着」を対にして戒めた、書経らしい対句の作りになっています。










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