四字熟語

前後不覚

(ぜんごふかく)

あとさきの区別もつかなくなるほど、正体を失うこと。


6文字の言葉せ・ぜ」から始まる言葉
前後不覚 ことば
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意味

「前後不覚」とは、自分がいま何をしているのかも分からなくなるほど、正体を失うことという意味です。
酒に酔いつぶれた場面で使われることが多く、「前後不覚に酔う」「前後不覚で眠り込む」のような形をとります。
酒だけでなく、高熱や強い衝撃で正常な判断ができなくなった状態にも用います。

  • 前後(ぜんご):物事のあとさき。
  • 不覚(ふかく):意識がしっかりしないこと。

語源・由来

「前後不覚」は、特定の書物の故事から生まれた言葉ではなく、あとさきを意味する「前後」と、意識がはっきりしない「不覚」を重ねてできた四字熟語です。

古い例は、藤原道長の日記『御堂関白記』に出てきます。
長保元年(九九九年)五月二十日の記事で、道長は宮中での務めを書きつけたあと、この間は心神がすぐれず退出した、と体の不調を記しました。
その続きに「前後不覚に悩む」とあり、酒の場ではなく病で意識がもうろうとした状態を表す言葉として使われています。

使い方・例文

「前後不覚」は、酒や病気で正体を失った状態を語る場面で使われます。

  • 祝いの席で飲みすぎ、前後不覚に眠り込んでしまった。
  • 高熱が三日続き、その間のことはほとんど前後不覚だ。
  • 前後不覚になるまで飲む癖は、いい加減あらためたい。

小説での使用例

『親友交歓』(太宰治)
酒を勧められた相手が正体をなくすのではないかと案じる場面で使われています。

いまに大酔いを発し、乱暴を働かないまでも、前後不覚になっては、始末に困る

類義語・関連語

「前後不覚」と同じく、意識がはたらかなくなった状態を表す言葉には以下のようなものがあります。

  • 人事不省(じんじふせい):
    意識を失い、周りの出来事が分からなくなること。
  • 泥酔(でいすい):
    正体をなくすほど深く酒に酔うこと。
  • 昏睡(こんすい):
    呼びかけにも反応しないほど深く意識を失った状態。

「前後不覚」と「人事不省」の違い

どちらも意識がはたらかない状態を言いますが、程度と使う場所が違います。
「前後不覚」は、酔いや高熱で判断がつかなくなった状態を日常の場面で言います。
「人事不省」は、意識そのものを失った状態を指し、医療や事故の報告に使われます。

語句意識の状態使う場面
前後不覚
(ぜんごふかく)
判断がつかない酒席や病床
人事不省
(じんじふせい)
意識を失っている事故や急病

英語表現

dead drunk

死んだようにという強め方で、正体をなくすまで酔った状態に合う表現。

He came home dead drunk again last night.
(彼はゆうべもまた前後不覚で帰ってきました。)

black out

目の前が暗くなるという言い方から、意識や記憶が途切れることを表す表現。

She blacked out after the second bottle.
(二本目のあと、彼女は前後不覚になりました。)

「不覚」が指すもの

「不覚」は、いくつもの意味をもつ語です。
「前後不覚」で使われているのは、心や意識がしっかりしないという意味です。
「不覚を取る」の「不覚」は油断して失敗すること、「不覚の涙」の「不覚」は思わず知らずそうなってしまうことを指します。
さらに古い時代では、『平治物語』に臆病という意味の使い方があり、『今昔物語集』には愚か者を指す「不覚の白者しれもの」という言い方が残っています。

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