意味
「蜘蛛の子を散らすよう(くものこをちらすよう)」とは、大勢が統率を失い、めいめいに逃げ散っていく様子です。
それまで一か所に集まっていた集団が、何かをきっかけに一斉に四方へ散っていく様子を描写する言葉で、混乱そのものより、逃げ散る速さと勢いの激しさを強調するニュアンスがあります。
- 蜘蛛の子(くものこ):孵化したばかりの小さな子蜘蛛
- 散らす(ちらす):一つにまとまっていたものをばらばらにすること
語源・由来

「蜘蛛の子を散らすよう」は、蜘蛛が卵から孵る際に実際に見られる生態に由来する言葉です。
蜘蛛は卵嚢と呼ばれる袋の中に多数の卵を産みつけ、孵化した子蜘蛛はしばらくその中にとどまっています。
やがて卵嚢が破れると、中にいた大量の子蜘蛛が一斉に飛び出し、瞬く間に四方八方へ散っていきます。
この、群れが一瞬でばらばらになる鮮烈な光景が、人々が慌てて逃げ散る様子を表す言葉としてそのまま使われるようになりました。
使い方・例文
「蜘蛛の子を散らすよう」は、集まっていた人々が一斉に逃げ散る様子を表す場面で使われます。
- 警官が現れた瞬間、露店の売り子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げた。
- にわか雨が降り出し、観客は蜘蛛の子を散らすように会場を後にした。
- 先生が教室に入ると、生徒たちは蜘蛛の子を散らすように席に戻った。
類義語・関連語
「蜘蛛の子を散らすよう」と同じく、集団が慌てて散らばる様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 算を乱す(さんをみだす):
整然としていた隊列や集団が、混乱してばらばらになること。 - 一目散に逃げる(いちもくさんににげる):
脇目も振らず、まっすぐに素早く逃げること。
鎌倉時代の史書『愚管抄』にも見える、800年前からの言い回し
この表現は、鎌倉時代初期の史書『愚管抄』(1220年)に「皆蛛の子を散すがごとくに、公卿も何もにげにけり」という形ですでに登場しており、800年近く使われ続けている古い言い回しです。
『愚管抄』は天台宗の僧・慈円が著した全7巻の歴史書で、神武天皇から順徳天皇までの歴史を独自の史観でまとめたものです。
成立は承久の乱の直前にあたり、朝廷と幕府の関係が緊迫していた時代を背景にした書物です。
慌てふためいて散っていく人々の姿を蜘蛛の子にたとえる感覚は、鎌倉時代からすでに現代とほぼ変わらない形で使われていたことになります。









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