意味
「眉を顰める(まゆをひそめる)」とは、不快なことや気がかりなことがあって、眉のあたりにしわを寄せるという意味です。
他人の見苦しいふるまいにいやな顔をするときにも、自分の心配ごとや憂いで顔をしかめるときにも使います。
語源・由来
「顰」は常用漢字に入っていない字なので、かなで「眉をひそめる」と書くことも多い言葉です。
「顰蹙」も同じ字を使い、眉をひそめ、顔をしかめることを表す漢語です。
周りの人が眉をひそめるような振る舞いをして嫌われることを「顰蹙を買う」と言います。
使い方・例文
- 電車の中で大声で電話をする客に、周りの人たちが眉を顰めた。
- 台風の進路予報を見ながら、祖父は畑の作物を思って眉を顰めている。
夏目漱石『それから』の診察の場面
夏目漱石の『それから』には、主人公の代助が、友人の平岡から妻の三千代が倒れたいきさつを聞く場面があります。
顔色の悪い三千代を診た医者が、心臓を診察して眉をひそめます。
他人のふるまいへの不快ではなく、病状を案じる顔つきです。
翌日朝起きて見ると三千代の色沢が非常に可くなかった。平岡は寧ろ驚ろいて医者を迎えた。医者は三千代の心臓を診察して眉をひそめた。卒倒は貧血の為だと云った。
(『それから』1909年)
類義語・関連語
- 愁眉をひそめる(しゅうびをひそめる):
心配事や悲しみから眉を寄せ、表情を暗くする。「眉を顰める」の二つの使い方のうち、心配の側に重なる語。 - 苦虫を噛み潰したよう(にがむしをかみつぶしたよう):
ひどく不愉快そうな顔つき。動作でなく表情の様子を言うたとえで、不快の側に重なる表現。
使うときの注意
文化庁が平成26年度(2014年度)に行った「国語に関する世論調査」によると、「心配や不安を感じ、表情に出すこと」を言うとき、本来の言い方とされてきた「眉をひそめる」を使う人が44.5%、「眉をしかめる」を使う人も44.5%で、同じ割合でした。
「眉をしかめる」も広く使われていますが、迷ったときは本来の言い方とされる「眉をひそめる」を選ぶと安心です。
英語表現
knit one’s brows
眉を寄せて顔をしかめること。
心配ごとや考えごとで眉間にしわが寄るときにも使う表現。
She knit her brows as she read the doctor’s letter.
(医者からの手紙を読みながら、彼女は眉を顰めた。)
frown on
好ましくないこととして、いい顔をしないこと。
他人のふるまいへの不快の側に重なる表現。
Talking loudly on the phone on a train is frowned on in Japan.
(日本では、電車の中で大声で電話をするのはよく思われない。)
「顰に倣う」の元は美女のしかめ顔
「顰める」の「顰」の字が出てくる話でよく知られているのが、古代中国の美女・西施の故事です。
思想書『荘子』によると、西施は胸を病み、村の中で眉をひそめていました。
その顔までが美しく見えたので、同じ村の醜い女が自分も胸に手を当て、眉をひそめて村を歩きました。
すると村の金持ちは門を固く閉ざして外に出なくなり、貧しい者は妻子を連れて村から逃げ出したといいます。
この話から、良し悪しを考えずに人のまねをすることを「顰に倣う」と言うようになりました。
「顰」は「顰める」と同じ字の名詞で、西施が胸を病んで眉を顰めた、そのしぐさを指しています。









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