意味
「木で鼻をくくる(きではなをくくる)」は、相手からの頼みごとをにべもなく突き放し、そっけなくあしらうという意味です。
相手の気持ちを汲み取ろうとせず、冷淡に突き放したり、そっけなくあしらったりする態度を指す言葉です。
語源・由来
「木で鼻をくくる」は、もともと「木で鼻をこくる(擦り落とす)」という言葉でした。
紙が貴重だった時代に、木片で鼻をこすってぬぐった様子を表したものといわれます。
硬い木で鼻をこすると痛みで不機嫌な顔になることから、無愛想な態度のたとえになったとする説があります。
のちに「こくる」が発音の似た「くくる」と誤って言われるようになり、それが定着しました。
使い方・例文
「木で鼻をくくる」は、相手の冷淡な態度を批判したり、不満を表したりする場面で使われます。
- 勇気を出して質問したが、木で鼻をくくった返事だった。
- 役所の窓口で木で鼻をくくるような対応をされた。
- 彼女は機嫌が悪いと、誰に対しても木で鼻をくくった態度をとる。
誤用・注意点
「木を鼻でくくる」と語順を入れ替えるのは誤りです。
また、言葉の響きから「木に鼻をくくりつける(縛る)」様子を想像しがちですが、本来は「こくる(擦る)」が変化した言葉であるため、紐などで縛るわけではありません。
類義語・関連語
「木で鼻をくくる」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- けんもほろろ:
人の頼み事などを無愛想に拒絶するさま。 - にべもない:
愛想がなく、思いやりが少しも感じられないさま。 - 取り付く島もない(とりつくしまもない):
相手の態度が冷淡で、話しかけるきっかけすらつかめない様子。
対義語
「木で鼻をくくる」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 懇切丁寧(こんせつていねい):
細かいところまで気が配られており、思いやりがあって親切なさま。 - 至れり尽くせり(いたれりつくせり):
配慮が細部まで行き届いており、申し分ない様子。 - 懇ろ(ねんごろ):
心がこもっていて、手厚く親切なさま。
英語表現
「木で鼻をくくる」を英語で表現する場合、以下のフレーズがよく使われます。
give someone the cold shoulder
意味:人に対して冷たい態度をとる、よそよそしく扱うこと。
He gave me the cold shoulder.
(彼は私に木で鼻をくくるような態度をとった。)
brush someone off
意味:人の話や要求を冷たくあしらう、すげなく断ること。
She brushed me off completely.
(彼女は私のことを完全に冷たくあしらった。)
1703年の浮世草子に「木で鼻こくったやうな返事」
古い用例の一つは、1703年の浮世草子『好色敗毒散』にあります。
酒を一杯ふるまおうと声をかけられた年配の男が、「かたじけなうはござれども、旦那衆のまねしてはあひませぬ」(ありがたいけれど、旦那衆のまねは私の身には合いません)と断ります。
その返事を、地の文は「木で鼻こくったやうな返事」と書いています。
明治の作品には、「くくる」の形が見えます。
夏目漱石の『吾輩は猫である』(1905〜06年)には「木で鼻を括ったような挨拶」とあります。
江戸の用例は「〜ような返事」、明治の用例は「〜ような挨拶」と、どちらもこの言葉で相手の受け答えを形容しています。












コメント