意味
「取り付く島がない」とは、相手の態度が冷たく、話しかけたり頼ったりするきっかけ(手がかり)が全くないことという意味です。
こちらの働きかけに対して、相手が無視をしたり、そっけない態度をとったりして、コミュニケーションの糸口すら掴ませてくれない絶望的な状況を指します。
- 取り付く(とりつく):すがりつく、手がかりにする。
- 島(しま):頼りとなるところ、安住の地。
語源・由来
この言葉は、海での航海や遭難の状況に由来しています。
海で嵐に遭ったり、船が難破して海に投げ出されたりしたとき、人は助かるために必死で「島」を探します。
しかし、見渡す限りの大海原で島が見つからなかったり、あるいは島があっても断崖絶壁で、上陸して身を寄せる場所(取り付く場所)がなかったりすれば、助かる見込みはありません。
この「頼りにしてすがりつく場所(島)がない」という絶望的な状況が転じて、人間関係において「相手の拒絶によって、どうすることもできない状態」を指すようになりました。
使い方・例文
ビジネスシーンでの交渉決裂や、機嫌の悪い上司への対応、あるいは喧嘩中のカップルなど、人間関係が断絶している場面でよく使われます。
「話は聞いたけれど断られた」というレベルではなく、「門前払い」や「完全拒絶」に近いニュアンスを含みます。
例文
- 企画の提案に行ってみたが、担当者は終始不機嫌で、取り付く島がなかった。
- 喧嘩をした妻に謝ろうとしたが、何を言っても無視され、取り付く島もない状態だ。
- 彼は仕事の虫で、雑談を振っても取り付く島がないほど素っ気ない。
誤用・注意点
「取り付く暇(ひま)がない」は間違い
この言葉における最大かつ頻出の誤用が、「取り付く暇がない」と言ってしまうことです。
- 誤:忙しくて取り付く暇がない。
- 正:つっけんどんで取り付く島がない。
「相手にしてくれない」理由を「忙しさ(暇がない)」と混同してしまうために起こる間違いですが、本来は「島」が正解です。
文化庁の世論調査でも、半数近い人が間違って覚えているという結果が出ています。
「取り付く端(は)がない」も誤り
似た言葉に「取り付く端(は)がない」という言い方をする人もいますが、これも誤用です。「取り付く島」で一つのセットとして覚えましょう。
類義語・関連語
「取り付く島がない」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。相手の冷淡さを表す表現が中心です。
- けんもほろろ:
人の頼み事や相談を、無愛想にきっぱりとはねつける様子。「けんもほろろに断られる」のように使います。 - 木で鼻をくくる:
無愛想で冷淡な態度のこと。誠意や温かみが全く感じられない、無骨な対応を指します。 - にべもない:
愛想がなく、あっさりしていること。「にべ」とは魚の浮袋から作られる粘着力の強い接着剤のこと。「粘り気(親密さ・未練)」がないという意味です。 - 聞く耳を持たない:
相手の意見や忠告を全く聞こうとしない頑なな態度。
英語表現
「取り付く島がない」を英語で表現する場合、相手の冷たい態度を示す慣用句がよく使われます。
give someone the cold shoulder
直訳は「人に冷たい肩を与える」で、「よそよそしい態度をとる」「冷たくあしらう」という意味を表す。無視したり、背中(肩)を向けて拒絶したりする様子を表す非常に一般的な表現。
I tried to apologize, but she gave me the cold shoulder.
(謝ろうとしたが、彼女は取り付く島もなかった。)
turn a deaf ear
直訳は「聞こえない耳を向ける」で、「耳を貸さない」「無視する」という意味を表す。話しかけても全く反応がない、というニュアンスで使われる。
「暇」と言い違えられやすい
この言い回しは、「取り付く暇がない」と覚え違えられることがよくあります。
文化庁の平成15年度「国語に関する世論調査」では、本来の「島」を使う人が44.4パーセント、「暇」を使う人が42.0パーセントで、差は2.4ポイントしかありませんでした。
「暇」で覚えると、相手が忙しくて話しかける余裕がない、という別の意味になります。
本来はこちらの働きかけを相手が受けつけないことを言う語で、忙しさとは関係がありません。










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