「目」は、単に物を見る器官であるだけでなく、「目は口ほどに物を言う」とも言われるように、感情や意志が表れる場所とされています。
また、「見る」という行為は、物事を判断したり、状況を把握したりする基本的な動作です。
「目が肥える」「一目瞭然」「画竜点睛」など、現代でも日常的に使われる表現から、「白眼視」のような古典に由来する故事成語まで、目にまつわる言葉は実に豊かです。
「目」や「見る」に関連する、主なことわざ・慣用句・四字熟語・故事成語・漢語表現を紹介します。
もくじ
「目・見る」に関する ことわざ
- 目は口ほどに物を言う(めはくちほどにものをいう):
言葉にしなくても、目つきや眼差しに本心はにじみ出てしまうという教え。
江戸時代の川柳集にもすでに見られる、古くからの言い回し。 - 目は心の鏡(めはこころのかがみ):
目を見れば、その人の心の正邪や真意が映し出されているというたとえ。
英語にも「The eyes are the window of the soul.(目は心の窓)」という言い方がある。 - 二階から目薬(にかいからめぐすり):
回りくどく、もどかしいほど効果が期待できないことのたとえ。
江戸前期からあることわざで、当時は「二階から目薬をさす(よう)」と言い、後期には上方のいろはかるたに「二階から目薬」の形で収められた。 - 目糞鼻糞を笑う(めくそはなくそをわらう):
自分も似たような欠点があるのに、他人の欠点だけをあざ笑う愚かさのたとえ。
汚い目やにが、同じく汚い鼻くそを笑うという不合理さになぞらえた表現。 - 目には目を歯には歯を(めにはめをはにははを):
受けた害と同じ程度の仕返しをすること。
古代バビロニアのハンムラビ法典に同じ趣旨の規定があり、旧約聖書の「出エジプト記」にも見える言葉。
受けた害を超える報復が一般的だった時代に、仕返しを害と同じ程度までに抑えた考え方。 - 生き馬の目を抜く(いきうまのめをぬく):
すばやく物事を行い、他人を出し抜いて利益を得る油断のならない様子。
生きた馬の目さえも一瞬で抜き取ってしまうほどの俊敏さにたとえたことわざ。
「目・見る」に関する慣用句
鑑識眼・判断力に関するもの
- 目がない(めがない):
夢中になるほど好きであること、または物事の良し悪しを見分ける力に欠けること。 - 目が高い(めがたかい):
良いものを見分ける優れた鑑識眼を持っていること。
「目が利く」とも言う。 - 目が利く(めがきく):
本物と偽物、良いものと悪いものを見分ける力に長けていること。
また、監督が行き届く意味にも使う。 - 目が肥える(めがこえる):
数多くの優れたものに接するうちに、良し悪しを見分ける感覚が磨かれていくこと。 - 見る目がある(みるめがある):
人や物が本当に持っている価値や将来性を、外見にとらわれず見抜く力があること。
目利きとしての確かな眼力を評価する際に使う言い回し。
驚き・感動の表現
- 目を疑う(めをうたがう):
自分の見たものが信じられず、思わず見間違いではないかと疑ってしまうほど驚くこと。
予想外の光景に直面した瞬間の反応を表す言葉。 - 目を丸くする(めをまるくする):
驚きのあまり、目を大きく見開いてしまう様子。
子どもがびっくりした顔つきを思わせる、素直な驚きの表情をとらえた表現。 - 目が点になる(めがてんになる):
ひどく驚いて、あっけにとられるさま。
漫画で、驚いた人物の目を点のように描くことから生まれた言い方。 - 目頭が熱くなる(めがしらがあつくなる):
感動や同情で涙がこみ上げ、目のふちが熱く感じられること。 - 目から鱗が落ちる(めからうろこがおちる):
何かをきっかけに、急に物事の真相や本質が見えるようになること。
新約聖書で、パウロの目からうろこ状のものが落ちて視力を取り戻した逸話に由来する言葉。 - 目が覚める(めがさめる):
迷いや思い込みから抜け出し、はっと真実に気づくこと。
眠りから覚めて視界が開ける感覚を、心の目覚めになぞらえた表現。
見る動作・注意に関するもの
- 目を光らせる(めをひからせる):
気を緩めず、厳しく見張り監視すること。 - 目を皿のようにする(めをさらのようにする):
驚いたり物を探したりして、目を大きく丸く見開くこと。 - 目を配る(めをくばる):
一か所に集中せず、あちこちに注意を行き渡らせること。
視線をこまめに動かして周囲全体を把握しようとする姿勢を表す言葉。 - 目が届く(めがとどく):
注意や監督が、隅々まで漏れなく行き渡ること。
広い範囲や細部にまで気を配れている状態を、視線の届く範囲になぞらえた表現。 - 刮目して見る(かつもくしてみる):
目をこすってでもよく見るように、注意深く見つめること。
「刮」は、こする意。 - 目をそらす(めをそらす):
見ないようにする、あるいは関心を意図的に他へ向けること。
都合の悪い現実や気まずい相手から視線を外す仕草を表す言葉。 - 目もくれない(めもくれない):
全く関心を示さず、見向きさえしないこと。
状態・様子を表すもの
- 目の色を変える(めのいろをかえる):
怒りや驚きで目つきが変わること。
また、何かに熱中して取り組むさま。 - 目が回る(めがまわる):
非常に忙しいこと、またはめまいがすること。
視界がぐるぐると回転するようなめまいの感覚を、慌ただしさの比喩にも転用した言葉。 - 目を引く(めをひく):
際立って目立ち、人の注意を自然と向かせること。
周囲から視線を集めるほどの、鮮やかさや華やかさを伴う印象の強さを表す言い回し。 - 目に浮かぶ(めにうかぶ):
実際に見ているように、その姿や情景が頭の中に思い描かれること。 - 目にする(めにする):
実際に自分の目で見ること。 - 目処が立つ(めどがたつ):
物事が完成・実現する見通しがつくこと。
「目処が付く」と同じ意味。
評価・態度を表すもの
- 大目に見る(おおめにみる):
人の過ちや欠点を厳しく責めず、寛大に扱うこと。
大ざっぱに見積もる、細かなところは見ないという意から転じた言い方。 - 白い目で見る(しろいめでみる):
冷淡な、あるいは敵意を含んだ目つきで人を見ること。
中国の阮籍が気に入らない客を白目がちの目で迎えたという故事に由来する表現。 - 長い目で見る(ながいめでみる):
目先の結果だけで判断せず、将来どうなるかを気長に見守ること。
時間の幅を「長さ」に置き換えた、余裕のある姿勢を示す言い回し。 - 目くじらを立てる(めくじらをたてる):
他人のささいな欠点や失敗を、大げさに責め立てること。
目をつり上げて人のあらさがしをする意で、「目角を立てる」とも言う。 - 目に余る(めにあまる):
程度があまりにひどく、黙って見過ごせないこと。
数が多くて一目で見渡せないほどである、という意味もある。 - 目をつぶる(めをつぶる):
見て見ぬふりをする、あるいは我慢すること。
また、まぶたを閉じる様子から「死ぬ」ことを婉曲に表す場合もある言い回し。 - 人目を気にする(ひとめをきにする):
周囲の人が自分をどう見ているかを、絶えず意識してしまうこと。
他人の視線を強く意識するあまり、行動が縮こまりがちになる心理を表す言い回し。
関係・距離を表すもの
- 目の上の瘤(めのうえのこぶ):
自分より優れていたり邪魔になったりして、うっとうしく感じる存在のこと。 - 目に入れても痛くない(めにいれてもいたくない):
わが子や孫などを、この上なく可愛がり大切に思うさま。
本来なら痛いはずの目の中にものが入っても痛くないと感じるほどの、深い愛情を表す言葉。 - 目と鼻の先(めとはなのさき):
距離が非常に近いことのたとえ。
顔の中で隣り合う目と鼻の物理的な近さを、そのまま距離感の比喩に置き換えた言い回し。
「目・見る」に関する四字熟語
- 一目瞭然(いちもくりょうぜん):
一度見ただけで、物事の様子や結果がはっきりとわかること。
「瞭然」は、はっきりとしている、明らかであるさまを表す。 - 岡目八目(おかめはちもく):
当事者よりも、そばで見ている第三者の方が全体の利害得失をよく見通せること。
他人の囲碁をそばで見ていると、対局者よりも冷静に手が読めることから。
「八目」を八手先と取る解釈が広く行われているが、「目」は地を数える語なので、八目分得をする手に気づく意とする説もある。 - 虎視眈々(こしたんたん):
機会を狙って油断なく様子をうかがうさま。
虎が鋭い目つきで獲物をじっと狙う姿にたとえた表現で、『易経』を出典とする四字熟語。 - 眼光炯炯(がんこうけいけい):
目が鋭く光り輝くさま。
また、洞察力や観察力が鋭いさま。 - 眼中無人(がんちゅうむじん):
自分のことしか目に入らず、他者を無視して勝手にふるまうこと。 - 衆目環視(しゅうもくかんし):
多くの人々が周りを取り巻き、注視していること。
「衆目」は大勢の視線、「環視」は周囲から取り囲んで見ることを意味する熟語。 - 明眸皓歯(めいぼうこうし):
澄んだ美しいひとみと白く整った歯。
中国の詩人杜甫が楊貴妃を詠んだ詩に由来し、美しい女性を形容する言葉として今に伝わる四字熟語。
「目・見る」に関する故事成語
- 画竜点睛(がりょうてんせい):
物事を完成させる最後の大事な仕上げのこと。
これを欠くと全体が引き立たない。
(竜の絵に瞳を描き入れたら本物のように飛び去ったという故事から) - 白眼視(はくがんし):
人を冷たい目で見ること、冷遇すること。
中国の阮籍が気に入らない客を白目がちの目つきで迎えたという竹林の七賢の故事に由来する言葉。 - 青眼(せいがん):
白眼視の対義で、人を好意的に迎える目つきのこと。
同じ阮籍の故事で、気に入った相手には黒目を見せて迎えたことに由来する表現。 - 刮目相待(かつもくそうたい):
人が目覚ましく成長したときは、以前の見方を改め、目をこすってよく見直して接するべきだということ。
『三国志』の注に見える故事で、呉の武将呂蒙が学問に励んで見違えるほど成長し、驚く相手に、三日会わなければ目をこすって見直すべきだと答えたことに由来する。
「目・見る」に関する漢語表現
- 慧眼(けいがん/えげん):
物事の本質を見抜く、鋭い知恵の目。
もとは仏教用語で、あらゆる物事が空であると見通す智慧の眼を意味する。
【特集記事】
体の部位のことば集(ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語)
「体の部位」に関係する有名なことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語の総合一覧です。










コメント