意味
「枯木寒林(こぼくかんりん)」とは、葉が落ち尽くした枯れ木と、寒々とした冬の林のことです。
転じて、活気がなく寂れ果てた様子や、人の気力が衰えてしまった状態の例えとしても使われます。
一方で、禅の教えにおいては、余計な執着や欲望をすべて削ぎ落とし、何ものにも捉われない「清浄で澄み切った心の境地」を指す、精神性の高い言葉でもあります。
熟語を分解すると以下の通りです。
- 枯木(こぼく):葉が落ち、乾燥して枯れた木。
- 寒林(かんりん):冬の寒々とした林。
語源・由来
「枯木寒林」という句は、禅にまつわる詩や語録に見られます。
宋の詩人陳巌の詩には「枯木寒林総是禅」という句があり、枯れ木も寒々とした林も、すべてが禅であると詠まれています。
さかのぼると、『景徳伝灯録』巻七に見える唐の禅僧・大梅法常の偈に、次のようにあります。
摧殘枯木倚寒林,幾度逢春不變心
(折れた枯れ木が寒い林に寄りかかり、幾度春に出会っても心を変えない)
清代の禅僧の語録には、これを縮めた「枯木寒林、逢春不変」も見えます。
使い方・例文
「枯木寒林」は、風景の描写だけでなく、人の状態や物事の勢いがない場面を言い表す際に使われます。
例文
- 枯木寒林のごとき静まり返った冬の公園を歩く。
- 祭りが終わり、会場一帯は枯木寒林の趣を呈している。
- 隠居した祖父は枯木寒林のような穏やかな日々を送る。
類義語・関連語
「枯木寒林」と似た情景や、静まり返った様子を指す言葉には以下のようなものがあります。
- 寂寥(せきりょう):
もの寂しく、ひっそりとしている様子。 - 荒涼(こうりょう):
景色が荒れ果てて、寂しい様子。 - 枯木逢春(こぼくほうしゅん):
枯れた木が春に会って再び芽吹くこと。絶望的な状況から再び活路を見出すという意味です。
対義語
「枯木寒林」とは対照的な、生命力に溢れた瑞々しい情景を示す言葉には以下のようなものがあります。
- 柳緑花紅(りゅうりょくかこう):
柳は緑、花は紅。自然のありのままの姿が美しく、色彩に満ちている様子。 - 百花斉放(ひゃっかせいほう):
いろいろな花が一斉に咲くこと。転じて、多くの人が自由に発言や活動をする例えです。 - 草木萌動(そうもくほうどう):
草木が芽吹き、新しい命が動き出すこと。
枯木寒林の偈は、山を出よという招きへの返事だった
大梅法常の「摧残枯木倚寒林」の偈には、詠まれたいきさつが伝わっています。
宋代の『苕渓漁隠叢話』が『伝灯録』から引くところでは、山中に住む法常のもとに迷い込んだ僧が戻って塩官禅師に話し、塩官が法常を山から呼び出そうと使いを送ったところ、法常は次の偈で答えました。
摧殘枯木倚寒林,幾度逢春不變心,樵客遇之猶不顧,郢人那得苦追尋。
(折れた枯れ木が寒い林に寄りかかり、幾度春に会っても心を変えない。木こりでさえ見向きもしないのに、郢の人がどうして苦労して探しに来ることがあろうか。)
字句を少し変えた同じ偈は『全唐詩』にも収められ、そこでは唐末の禅僧・曹山本寂が南平王の招きを断った詩とされています。









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