意味
「破釜沈船(はふちんせん)」とは、後戻りする道をみずから断ち切り、覚悟を決めて物事に立ち向かう姿勢です。
- 破釜(はふ):食事を作るための釜(なべ)を壊すこと。
- 沈船(ちんせん):乗ってきた船を水底に沈めること。
語源・由来
「破釜沈船」は、古代中国の歴史書『史記』に記された、楚の武将・項羽の逸話に由来します。
強大な秦の軍勢と戦うべく川を渡った項羽は、渡り終えると兵士たちが乗ってきた船をすべて川に沈め、食事用の釜を粉々に打ち砕かせました。
持たせたのはわずかな食糧だけ。帰る手段も、温かい食事を作る道具も、もはや存在しません。
退路を完全に断たれた兵士たちは、生き残るために死に物狂いで戦い、見事に大勝利を収めました。
「破釜」は釜を破り砕くこと、「沈船」は船を沈めることを意味し、この壮絶な逸話がそのまま言葉として刻まれています。
使い方・例文
「破釜沈船」は、人生の岐路や組織の命運を分けるような大勝負の場面で使われます。
- 第一志望の大学に、破釜沈船の覚悟で挑む。
- 彼は破釜沈船の思いで長年勤めた会社を辞め、起業に踏み切った。
- チーム一丸となり、破釜沈船で決勝戦の舞台へ向かう。
類義語・関連語
「破釜沈船」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 背水の陣(はいすいのじん):
一歩も退くことのできない状況に身を置き、決死の覚悟で事に当たること。 - 乾坤一擲(けんこんいってき):
運命をかけて、のるかそるかの大勝負をすること。 - 捨て身(すてみ):
自分の命や地位を失う覚悟で、思い切って物事に当たること。 - 一か八か(いちかばちか):
結果はどうなろうと、運を天に任せて思い切ってやってみること。
対義語
「破釜沈船」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 安全策(あんぜんさく):
危険な橋を渡らず、確実で安全な方法を選ぶこと。 - 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく):
ゆとりが十分にあり、焦ったり慌てたりしていない様子。
英語表現
「破釜沈船」を英語で表現する場合、歴史的な背景を含んだ以下の定型句がよく使われます。
burn one’s boats
直訳:自分の船を燃やす
意味:乗ってきた船を燃やして退路を断つという、「破釜沈船」と全く同じ発想から生まれた表現です。
後戻りできない状況を作ることを意味します。
似た表現に「burn one’s bridges(橋を燃やす)」があります。
He burned his boats to start a new business.
(彼は破釜沈船の覚悟で新しいビジネスを始めた。)
cross the Rubicon
意味:古代ローマの英雄カエサルが「賽は投げられた」と言ってルビコン川を渡った故事に由来し、重大な決断を下して後戻りできない行動に出ることを表します。
They crossed the Rubicon when they signed the contract.
(契約書にサインした時、彼らは後戻りできない決断を下した。)
「破釜沈船」の項羽は『史記』の本紀に記されている
「破釜沈船」は『史記』項羽本紀に由来し、秦を打倒する巨鹿の戦いで、項羽が黄河を渡った後に船を沈め、炊事用の釜を壊し、兵舎を焼き払って三日分の食糧だけを持たせ、兵士に決死の覚悟をさせて秦の大軍を打ち破った故事にちなみます。
この巨鹿の戦いでの勝利により、項羽は諸侯の中で絶対的な地位を得ました。
司馬遷の『史記』には帝王の事績を記す「本紀」が12篇あります。
そのうち始皇帝の本紀に続く6篇で、皇帝でない人物の本紀は、項羽本紀と、漢の高祖の皇后だった呂太后の本紀の2篇だけです。
司馬遷は『史記』の太史公自序で項羽本紀の要旨を述べ、その中で「殺慶救趙,諸侯立之」と、上将軍の宋義(原文の「慶」は宋義の号「卿子冠軍」を指す)を殺して趙を救い、諸侯に擁立されたことに触れています。













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