意味
「十羊九牧(じゅうようきゅうぼく)」とは、10匹の羊に対して9人もの羊飼いがいるという意味で、人口の割に役人が多すぎることのたとえです。
役所に限らず、指示を出す役職者ばかりが多くて実際の働き手が少ない、組織のいびつさを批判する際にも使われます。
- 十羊(じゅうよう):十匹の羊。
- 九牧(きゅうぼく):九人の羊飼い。
語源・由来
中国・隋の役人、楊尚希が文帝に差し出した上表文(『隋書』楊尚希伝)に由来します。
当時の隋では、人口に見合わないほど多くの州や郡が置かれ、その分だけ役人も膨れ上がっていました。
楊尚希はこれを問題視し、上表文で次のように述べています。
具僚以眾,資費日多;吏卒人倍,租調歲減。清幹良才,百分無一,動須數萬,如何可覓?所謂民少官多,十羊九牧。
(役人が多いため費用は日ごとにかさみ、下役や兵卒は倍に増えて、税の収入は年ごとに減っています。清廉で有能な人材は百人に一人もいないのに、何万人も要るとなれば、どうして見つけられましょう。いわゆる、民は少なく役人は多い、十頭の羊に九人の羊飼いというものです。)
この上表文の「十羊九牧」が、人口の割に役人が多すぎることのたとえとして使われるようになりました。
使い方・例文
「十羊九牧」は、治められる人や実際の働き手に比べて、治める側・指示を出す側の人数が多すぎる場面で使われます。
- 現場は完全に十羊九牧の有様である。
- 十羊九牧の体制では何も進まない。
類義語・関連語
「十羊九牧」と同様に、指示する者が多すぎて物事がまとまらない状況を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 船頭多くして船山に上る(せんどうおおくしてふねやまにのぼる):
指図する人が多すぎて、物事が見当違いの方向に進んでしまうこと。 - 一国三公(いっこくさんこう):
一つの国に君主と同等の権力者が三人いること。トップが多くてまとまらないこと。 - 築室道謀(ちくしつどうぼう):
家を建てる際に道行く人に意見を求めた結果、方針が定まらず一向に物事が進まないこと。
「十羊九牧」と類義語の違い
いずれも「上に立つ人が多すぎる」という共通点がありますが、焦点や結末に違いがあります。
| 語句 | 焦点 | 事態の結末 |
|---|---|---|
| 十羊九牧 (じゅうようきゅうぼく) | 治められる側に対する役人・指示役の 「多すぎる割合」 | 費用がかさむ一方で、税などの収入は減っていく |
| 船頭多くして船山に上る | 指図する人間の 「多さ」 | まったく見当違いの方向に進む |
| 一国三公 | トップ権力者の 「複数化」 | 誰も言うことを聞かずまとまらない |
英語表現
top-heavy
意味:(組織が)管理職や役職者を抱えすぎている
本来は「上が重くて倒れやすい」という意味の形容詞で、組織について使うと、働き手に比べて管理する側の人数が多すぎる状態を表す表現。
The town government has become top-heavy, with too many officials for its small population.
(その町の役所は人口が少ない割に役人が多く、まさに十羊九牧だ。)
「十羊九牧」の上表で隋が郡を全廃
楊尚希は上表文で、「十羊九牧」の一節に続けて、必要なものを残して不要なものを除き、小さな郡や県を合わせて大きくするよう提案しました。
そうすれば国の財政は損なわれず、官吏に選ぶ有能な人材も得やすくなる、というのが楊尚希の見立てでした。
『隋書』楊尚希伝によれば、文帝はこの上表を読んで高く評価し、天下の郡をことごとく廃止しました。










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