支配者や指示を出す役職者ばかりが多く、実際に現場で働く者が極端に少ない状況。
このような頭でっかちな行政や組織の構造を表すのが、
「十羊九牧」(じゅうようきゅうぼく)です。
意味
十羊九牧とは、10匹の羊に対して、9人もの羊飼いがいるという意味です。
転じて、指示を出す役職者ばかりが多くて実際の働き手が少なく、現場が混乱してしまう組織のいびつさを批判する際に使われます。
命令系統が乱立し、現場の人間が「誰の指示に従えばいいのかわからない」と疲弊しているネガティブな状況で用いられる言葉です。
- 十羊(じゅうよう):十匹の羊
- 九牧(きゅうぼく):九人の羊飼い
語源・由来
中国の隋の時代、『隋書』に登場する楊尚希(よう しょうき)という役人のエピソードに由来します。
当時の隋は、国を治める役人の数が異常に増えすぎていました。
その惨状を見た楊尚希は、文帝(皇帝)に対して
「人民が少なく役人が多すぎます。まさに十匹の羊に九人の羊飼いがいるような状態です」
と直訴し、行政機構のスリム化を強く進言しました。
この歴史的出来事が、機能不全に陥った組織を嘆く言葉の起源とされています。
使い方・例文
「十羊九牧」は、指示を出す上司やリーダーばかりが多く、実働部隊が不足している場面で使われます。
- 現場は完全に十羊九牧の有様である。
- 十羊九牧の体制では何も進まない。
類義語・関連語
「十羊九牧」と同様に、指示する者が多すぎて物事がまとまらない状況を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 船頭多くして船山に上る(せんどうおおくしてふねやまにのぼる):
指図する人が多すぎて、物事が見当違いの方向に進んでしまうこと。 - 一国三公(いっこくさんこう):
一つの国に君主と同等の権力者が三人いること。トップが多くてまとまらないこと。 - 築室道謀(ちくしつどうぼう):
家を建てる際に道行く人に意見を求めた結果、方針が定まらず一向に物事が進まないこと。
「十羊九牧」と類義語の違い
いずれも「指示する人が多すぎる」という共通点がありますが、焦点や結末のニュアンスに決定的な違いがあります。十羊九牧は「働き手との割合の異常さ」に重きを置くのに対し、船頭〜は「見当違いな結果」、一国三公は「権力の分散による停滞」に焦点が当たります。
| 語句 | 焦点 | 事態の結末 |
|---|---|---|
| 十羊九牧 | 働き手に対する指示役の 「異常な割合」 | 現場が混乱して動けない |
| 船頭多くして船山に上る | 指図する人間の 「多さ」 | まったく見当違いの方向に進む |
| 一国三公 | トップ権力者の 「複数化」 | 誰も言うことを聞かずまとまらない |
英語表現
Too many cooks spoil the broth.
意味:料理人が多すぎるとスープがダメになる
- 例文:
Too many cooks spoil the broth, so let’s elect one leader.
料理人が多すぎるとスープがダメになりますから、リーダーを一人選びましょう。
1000年以上前に「組織の病」を見抜いた男
役人の数は仕事の量に関わらず増え続ける。
イギリスの学者が提唱した「パーキンソンの法則」ですが、中国の隋の時代、すでにこの問題を見抜いていた人物がいました。
それが言葉の生みの親である楊尚希です。
彼は、国が安定して仕事が減ったはずなのに、なぜか役人ばかりが肥大化していく状況を皇帝に直訴しました。
「パーキンソンの法則」が発表される1300年以上前に、すでに同じ事象が歴史に記録されています。









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