意味
「守銭奴(しゅせんど)」とは、お金への執着が並外れて強く、どれだけ貯め込んでも満足できずに手放そうとしない人を表します。
極端にケチで、他者への配慮や道徳よりもお金を最優先にするネガティブなニュアンスを持っています。
- 守銭(しゅせん):お金を大切に守り手放さない様子。
- 奴(ど):人をののしって言う言葉。
語源・由来
「守銭奴」は、中国の歴史書『後漢書』に登場する「守銭虜」という言葉がルーツです。
後漢の武将馬援が、田畑と牧畜で築いた自分の財産について「およそ財産を殖やすのは、人に施し与えられてこそ価値がある。そうでなければ守銭虜にすぎない」と嘆き、財産をすべて兄弟や旧友に分け与えた話に由来します。
「守銭奴」は、「守銭虜」の「虜」を、人をののしって言う「奴」に替えた形です。
日本では、江戸時代後期に寺門静軒が江戸の町のにぎわいを漢文で書いた『江戸繁昌記』(1832〜36年)に、すでに出てきます。
使い方・例文
- あの人は親の葬儀代すら出し渋る、筋金入りの守銭奴だよ。
- 守銭奴と蔑まれても、彼はただひたすらに通帳の数字を増やし続けた。
誤用・注意点
「守銭奴」は、お金に執着する人を「奴」と呼んで強く貶める言葉です。
文学作品の登場人物を評したり、金銭感覚そのものを論じたりする場面では使われますが、実在の人に向ければ、倹約や貯蓄の姿勢まで人格の欠点として切り捨てたことになります。
金銭感覚の違いを指摘したいのであれば、「お金に細かい」のように程度を限った言い方があります。
類義語・関連語
「守銭奴」と同様に、金銭に対する異常な執着を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 金の亡者(かねのもうじゃ):
お金に取り憑かれ、他のすべてを犠牲にしてまで利益を追求する存在。 - 吝嗇家(りんしょくか):
極端に物惜しみをし、出すべきお金すら出そうとしないケチな人物。 - 拝金主義者(はいきんしゅぎしゃ):
お金こそが世の中で最も尊い価値であると信じて疑わない思想の持ち主。
「守銭奴」と「吝嗇家」の違い
「守銭奴」と「吝嗇家」はどちらも極端なケチを指しますが、執着の度合いと言葉の強さに違いがあります。
「守銭奴」はいくら貯めても満足しないほど病的にお金へ執着し、「奴」という強い蔑称を伴うのに対し、「吝嗇家」は出すべき場面でお金を出し渋る性格を指す言葉で、蔑みの度合いはやや穏やかです。
対義語
「守銭奴」とは反対に、金銭に執着しない様子を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 浪費家(ろうひか):
金銭の価値を顧みず、後先考えずに無駄遣いを繰り返す人。 - 散財家(さんざいか):
必要以上に金銭を気前よく使い、自らの財産を減らしてしまう存在。
英語表現
miser
お金を極端に惜しんで使わず、ため込むだけの人物を指す直接的な表現。
Don’t be such a miser.
(そんな守銭奴になるなよ。)
penny-pincher
1ペニー(わずかなお金)すらつまんで離さないような、極端なケチを表す表現。
He is known as a strict penny-pincher.
(彼は筋金入りの守銭奴として知られています。)
モリエールから森鴎外まで、芝居と小説の守銭奴
フランスの劇作家モリエールの喜劇(1668年初演)は、日本では『守銭奴』の題で知られています。
けちな高利貸アルパゴンが、自分の子どもたちを金目当てに結婚させようとして騒ぎを起こす話です。
明治の作家尾崎紅葉は、これを日本の話に置き換えて『夏小袖』(1892年)を書きました。
森鴎外の小説『雁』(1911〜13年)では、語り手が守銭奴について意見を述べています。
小説や芝居の守銭奴はたいてい徹底したけちばかりだが、実際に金を貯める男には、けちなのに女には目がないなど、どこかで息を抜いている者が多い、という見方です。
作中の高利貸の末造もその一人で、けちでありながら身なりにだけは金をかける男として書かれています。










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