ことわざ 慣用句

頭の上の蠅を追え

(あたまのうえのはえをおえ)

他人の世話を焼く前にまずは自分の問題を解決せよという教え。

異形:己の頭の蠅を追え/頭の蠅を追え/頭の上の蝿を追う

12文字の言葉 / 「あ」から始まる言葉
頭の上の蠅を追え ことば
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意味

「頭の上の蠅を追え(あたまのうえのはえをおえ)」は、他人の世話を焼く前にまずは自分の足元を固め、自身の問題を処理せよという意味です。

自分の頭にとまっている蠅(身近な問題や自分自身の欠点)を追い払うことさえできないのに、他人のことに口を出すのは筋違いであるという構造のたとえから成り立っています。

語源・由来

二葉亭四迷の小説『浮雲』第一篇(1887年・明治20年)では、母親のお政が娘のお勢に言い返す台詞の中に、次のように出てきます。

ヘン、親の謗そしりはしりよりか些ちっと自分の頭の蠅でも逐おうがいいや、面白くもない
(親の悪口を言う暇があったら、少しは自分の頭の蠅でも追い払うがいい、面白くもない。)

自力で追い払うべき身近な厄介事や自身の欠点を「頭にとまる蠅」になぞらえ、他者への分不相応な干渉やお節介を戒める言葉です。

使い方・例文

「頭の上の蠅を追え」は、自分の欠点を棚に上げて他人に口出しする人をたしなめる場面で使われます。

  • 人のミスを指摘する前に、頭の上の蠅を追え。
  • 自室も片付けられないなら、まずは頭の上の蠅を追え。
  • 他人の成績を心配する前に、頭の上の蠅を追うべきだ。

誤用・注意点

目上の人に対して使用すると、相手の欠点を指摘した上で「自分の世話だけしていろ」と突き放す無礼な表現になるため、目上の人には使わないのが無難です。

類義語・関連語

「頭の上の蠅を追え」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 人の振り見て我が振り直せ(ひとのふりみてわがふりなおせ):
    他者の言動の良い点や悪い点を観察し、自身の行動や態度の改善に役立てること。
  • 先ず隗より始めよ(まずかいよりはじめよ):
    大きな物事に取り組む際は、まず身近なことから着手すべきであるという教え。
  • 人の蠅追うより己の蠅を追え(ひとのはえおうよりおのれのはえをおえ):
    他人の世話を焼く暇があるなら、まずは自分自身の問題を処理すべきであるという戒め。
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英語表現

Sweep before your own door

直訳は「自分のドアの前を掃け」。
他者を批判する前に自身の問題を解決すべきであるという教え。

You should sweep before your own door.
(他人のことを言う前に自分の行いを正すべきです。)

Mind your own business

他人の領域に干渉せず自分のことだけを気にかけるべきであるという警告。

Just mind your own business.
(余計なお世話です。)

People who live in glass houses shouldn’t throw stones

直訳は「ガラスの家に住む者は石を投げるべきではない」。
自身に弱点がある者は他人を攻撃したり批判したりすべきではないという戒め。

Don’t criticize her, people who live in glass houses shouldn’t throw stones.
(自分にも欠点があるのだから、彼女を批判するべきではありません。)

頭の上の蠅を追え、『浮雲』では聞き古した諺として登場

二葉亭四迷の『浮雲』第三篇では、主人公の内海文三うつみぶんぞうが、心を寄せていたお勢とのいきさつを振り返る場面で、この言葉の長い形を思い出します。

人事ひとごとで無い。お勢も悪るかッたが、文三もよろしく無かッた。「人の頭の蠅を逐おうよりは先ず我頭のを逐え」——聞旧ききふるした諺も今は耳新しく身に染みて聞かれる。
(他人事ではない。お勢も悪かったが、文三もよくなかった。「人の頭の蠅を追うより、まず自分の頭の蠅を追え」――聞き古したことわざも、今は耳新しく身にしみて聞こえる。)

文三はこのあと、何事につけても自分一人を責め、お勢をむやみにとがめなかったと書かれています。
作中で「聞旧した諺」と呼ばれていることから、『浮雲』が書かれた明治20年代の初めには、すでに言い古されたことわざだったことが分かります。

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