意味
「魔が差す」とは、普段なら考えられないような過ちを、ほんの一瞬の心の隙につけ込まれて犯してしまう様子を表します。
本人の性格や普段の行いとは関係なく、一時的な出来心で過ちを犯してしまう場合に使われます。
- 魔(ま):人の心を惑わす悪神、悪魔。
- 差す(さす):入り込む、忍び込むこと。
語源・由来
「魔が差す」は、仏教用語の「魔羅(まら)」に由来するという説があります。
魔羅とは、人の善い行いを妨げようとする悪神とされ、この魔羅が人の心にふと入り込むことで、思いがけない過ちを犯してしまう、という発想から生まれた言葉とされています。
実際の用例としては、江戸時代の浄瑠璃『冥途の飛脚』(1711年頃)に「根性に魔がさいて大分人の金を誤り」という一節があり、古くから悪事や過ちを説明する言葉として使われてきたことがわかります。
使い方・例文
「魔が差す」は、普段はしないような過ちをふと犯してしまった場面で使われます。
- 一瞬、魔が差してうそをついてしまった。
- 魔が差したとしか思えない行動だった。
- つい魔が差して、お菓子をつまみ食いした。
類義語・関連語
「魔が差す」と似た意味で使われる言葉に、次のようなものがあります。
- 出来心(できごころ):
ふとその場で起きる、よくない考え。
英語表現
a moment of weakness
「気の緩んだ一瞬」という意味で、魔が差した状況を説明する際に使える表現。
I had a moment of weakness and lied.
(つい魔が差してうそをついた。)
the devil made me do it
「悪魔がそうさせた」という口語表現で、魔が差したというニュアンスに近い言い方。
I don’t know why I did it — the devil made me do it.
(なぜやったのか自分でもわからない、魔が差したんだ。)
「魔」の正体は、サンスクリット語だった
「魔」という漢字は、もとから中国や日本にあった言葉ではありません。
サンスクリット語で「破壊者」「殺す者」を意味する「māra(マーラ)」を、古代中国の仏典翻訳者たちが「魔羅(まら)」と音写したのが始まりとされています。
仏教では、修行や善行を妨げるものを指す言葉として使われ、欲界の最高天に住むとされる魔王(天魔波旬)などの概念に用いられました。
やがてこの「魔羅」が略されて「魔」となり、魔物・悪魔・魔法など、目に見えない邪悪な力を表す言葉として日本語に定着しました。
「魔が差す」の「魔」も、この仏教由来の「心の隙に入り込む邪悪な存在」というイメージを受け継いでいます。










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