あまりの美しさや恐ろしさに、思わず言葉を失ってしまう瞬間がある。
そんな現実離れした様子を表すのが、「この世のものではない」(このよのものではない)です。
意味
「この世のものではない」とは、美しさや恐ろしさなどの程度が尋常でなく、現実のものとは思えないことという意味です。
賞賛にもおそれにも使うことができ、良い意味・悪い意味の両方で、常識を超えた印象を伝える言い回しです。
- この世(このよ):人間が生きている現実の世界。
- もの:存在、存在物。
語源・由来
「この世のものではない」は、日本語における「この世」と「あの世」という世界観の対比から生まれた言い回しと考えられています。
仏教などの影響を受け、日本語には生者が暮らす「この世(此岸)」と、死後の世界である「あの世(彼岸)」を区別する感覚が古くから根付いてきました。
この対比を利用し、人間の常識では説明のつかないほどの美しさや恐ろしさを、「あの世に属するもの」であるかのように表現したのが、この言葉の発想だとされています。
使い方・例文
「この世のものではない」は、常識を超えた美しさや恐ろしさを強調する場面で使われます。
- 彼女の歌声はこの世のものではないほど美しかった。
- その悲鳴はこの世のものではないように響いた。
- 舞台演出がこの世のものではない迫力だった。
英語表現
out of this world
常識を超えた素晴らしさを表す代表的な表現で、良い意味で使われることが多い。
Her voice was out of this world.
(彼女の声はこの世のものとは思えないほどだった。)
otherworldly
「あの世のような」という直訳のとおり、美しさにも不気味さにも使える形容詞。
The scenery looked otherworldly.
(その景色はこの世のものとは思えなかった。)
「この世」と「あの世」を分ける日本語の発想
日本語には、生きている人間が暮らす「この世」と、死後の世界である「あの世」を明確に分ける感覚が根強く残っています。
「この世のものではない」という表現は、この二項対立を利用し、常識では説明のつかない美しさや恐ろしさを、あの世に属するものであるかのように語ることで、強い印象を与える工夫だといえます。
英語の「out of this world」も、現実の世界の外側に素晴らしさを位置づける発想であり、異なる文化圏でも似た比喩が使われている点は興味深いところです。









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