意味
「飛耳長目(ひじちょうもく)」とは、遠く離れた出来事まで鋭く察知し、あらゆる情報に通じているという意味です。
単に耳や目が良いという話ではなく、観察眼が鋭く、広い視野で物事の情勢を的確に捉えられる人物への敬意を込めて使われる言葉です。
- 飛耳(ひじ):遠くの音を聞き取る鋭い耳の例え。
- 長目(ちょうもく):遠くまで見通す鋭い目の例え。
語源・由来
「飛耳長目」は、中国古代の政治思想書『管子』の一節に由来します。
斉の名宰相・管仲の名を冠したこの書の「九守」篇は、君主が国を治めるために守るべき9つの心得を説いており、その中に「一に曰く長目、二に曰く飛耳、三に曰く樹明」とあります。
続く文では、千里の外や隠れて見えないところまで明らかに知ることが、隠れた悪事をあぶり出すことにつながると説かれています。
『管子』では「長目」が先ですが、梁の武帝が天監5年(506年)に出した詔には、すでに「飛耳長目」の並びで出てきます。
使い方・例文
「飛耳長目」は、情報網の広さや観察力の鋭さをほめる場面で使われます。
- 彼はまさに飛耳長目の情報通で、業界の変化に誰よりも早く気づく。
- 密偵たちの飛耳長目によって、敵陣の動きは筒抜けだった。
- 経営者には飛耳長目の姿勢で市場を見渡す力が求められる。
類義語・関連語
「飛耳長目」と同様に、優れた観察力や情報収集力を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 千里眼(せんりがん):
遠く離れた場所の出来事まで見抜く力の例え。 - 地獄耳(じごくみみ):
誰も知らないような情報や噂を、いち早く聞きつけること。
「飛耳長目」と類義語の違い
どちらも情報や状況を鋭く捉える力を表しますが、ニュアンスには違いがあります。
「千里眼」は個人が持つ生まれつきの洞察力、「地獄耳」は噂話を素早く聞きつける耳の早さを指す口語的な言葉です。
一方「飛耳長目」は、組織的な情報網を通じて物事に精通することを指す、やや格式ばった言葉です。
| 語句 | ニュアンス | 主に使う場面 |
|---|---|---|
| 飛耳長目 (ひじちょうもく) | 組織的な情報網と広い視野 | 統治、ビジネス、公式な場 |
| 千里眼 (せんりがん) | 個人の鋭い洞察力・予知力 | 能力を形容する場面 |
| 地獄耳 (じごくみみ) | 噂話を素早く聞きつける早さ | 日常会話、やや軽い文脈 |
英語表現
have an ear to the ground
地面に耳を当てて情報を探る様子から、世情に敏感で情報通であることを表す表現。
A good leader always has an ear to the ground.
(優れた指導者は常に情報網を張り巡らせている。)
吉田松陰、閉じ込められた身で各地の情報を集める
「飛耳長目」は、もとは遠くの音を聞きつける耳と、遠くまで見通す目のことです。
幕末の吉田松陰は、黒船に乗り込んで海外へ渡ろうとして失敗した罪で、故郷の萩の実家に閉じ込められた身でした。
その実家で、叔父が始めた松下村塾を引き継いで若者を教えました。
自分は外に出られない代わりに、各地へ出かける塾生や訪ねてくる人から各地の出来事を聞き、「飛耳長目」と名づけた帳面に書き留めました。
集めた出来事は、そのまま塾の教材にもなりました。
「なぜこの事件が起きたのか」「どうすれば防げたのか」を塾生と論じ合い、世の中の動きを自分の頭で考える訓練にしたといわれます。
『管子』では君主の心得だった「飛耳長目」を、松陰は、動けない自分の目と耳を遠くまで届かせる手段として使ったことになります。











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