意味
「艱難辛苦(かんなんしんく)」とは、困難にあって苦しみ悩むことです。
「艱難」と「辛苦」という似た意味の言葉を重ねて苦しさを強めた四字熟語で、身に降りかかった困難と、そこで味わうつらさの両方を一語で表します。
「艱難辛苦を乗り越える」「艱難辛苦の末に」のように、その苦労を切り抜けたことを語る場面で使われます。
- 艱難(かんなん):苦しみ悩むこと。困難。
- 辛苦(しんく):つらく苦しい思いをすること。
語源・由来
「艱難辛苦」は、意味の近い二字の漢語を組み合わせてできた言葉です。
「艱」「難」「辛」「苦」の四字は、いずれも苦しさやむずかしさを指します。
日本語の文章では、江戸時代後期の人情本『春色梅児誉美』(1832〜33年)に「お長が艱難辛苦を退れさせんがため」という一節が出てきます。
使い方・例文
「艱難辛苦」は、積み重なった苦労をひとまとめにして振り返る場面で使われます。
- 創業からの艱難辛苦を思えば、この一日は忘れられない。
- 十年の艱難辛苦を経て、店はようやく軌道に乗った。
- 祖父の半生は艱難辛苦の連続だったと聞いている。
自伝に残る一節
『福翁自伝』(福沢諭吉)
過ぎてしまえば苦しさは残らない、と自らの半生を振り返る場面で使われています。
咽元通れば熱さ忘れると云うその通りで、艱難辛苦も過ぎて仕舞えば何ともない
類義語・関連語
「艱難辛苦」と同じように、重なった苦労を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 千辛万苦(せんしんばんく):
さまざまな難儀や苦労にあうこと。 - 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
目的を果たすために、自分から苦しみに耐えること。 - 艱難汝を玉にす(かんなんなんじをたまにす):
人は苦労を乗り越えてこそ立派になるという教え。
「艱難辛苦」と「千辛万苦」の違い
どちらも苦労が重なった状態を指し、入れ替えても通じる場面が多くあります。
分かれ目は強めるところで、「艱難辛苦」は苦しみの重さを、「千辛万苦」は苦労の種類の多さを表します。
| 語句 | 強めるところ | よく使う形 |
|---|---|---|
| 艱難辛苦 (かんなんしんく) | 苦しみの重さ | 艱難辛苦を乗り越える |
| 千辛万苦 (せんしんばんく) | 苦労の種類の多さ | 千辛万苦して成功を得る |
英語表現
trials and tribulations
「試練」と「苦難」を並べた言い方で、長く続いた苦労をひとまとめに振り返る表現。
She succeeded after years of trials and tribulations.
(彼女は長年の艱難辛苦の末に成功しました。)
「艱難辛苦して」と動詞でも使う
「艱難辛苦」は名詞のほかに、「する」を付けて動詞としても使われてきました。
明治34年(1901年)の『報徳訓講義』は、二宮尊徳の教え「来年の衣食は今年の艱難にあり」を説く中で、「風雨寒暑を厭はず、艱難辛苦して、田畠山林の耕作培養を為し」と書いています。
雨風や暑さ寒さをいとわず、苦労を重ねて田畑や山林を耕し育てる、という意味です。
同じころの落語にも、三代目春風亭小柳枝の『無学者』(1898年)に「非常に艱難辛苦して」という言い方が出てきます。
書き言葉の講義録だけでなく、寄席の語りでも動詞の形が通じていたことになります。
「艱難辛苦して」は、つらく苦しい思いを重ねながら、という意味で後ろの動作にかかります。









コメント