意味
「後塵を拝する」は、競争や順番で他人に先を越され、後ろに回されることを指す使い方が中心です。
先を行く人が巻き上げた土ぼこりを浴びる位置に立つ、という情景から出た言い方です。
地位や権勢のある人をうらやましく思う、すぐれた人物につき従う、という意味もあります。
- 後塵(こうじん):人や車馬が走り過ぎたあとに立つ土ぼこり。
- 拝する(はいする):頭を垂れて礼をすること。おがむこと。
語源・由来
「後塵を拝する」は、中国の歴史書『晋書』の「石崇伝」と「潘岳伝」に載る話から生まれた言葉です。
三世紀の終わり、西晋の王朝では、皇后の甥にあたる賈謐が皇后の権威を笠に着て権力を握っていました。
大金持ちの石崇と、名文家として知られた潘岳の二人はこの賈謐にこびへつらい、彼が外出するたびに、その馬車が立てた土ぼこりに向かっておじぎをしていました。
やがて賈謐が失脚したのち、二人とも命を落としています。
原文では「望塵而拝」、読み下せば「塵を望みて拝す」と書かれています。
土ぼこりを見つめて拝むという、あからさまなへつらいを写した言い方です。
使い方・例文
「後塵を拝する」は、競争で他人に先を越された立場を述べる場面で使われます。
- 一歩の差で優勝候補の後塵を拝した。
- 新製品は他社の後塵を拝する形になった。
- 同期に先を越され、後塵を拝する日々が続く。
類義語・関連語
「後塵を拝する」と同じように、人の後ろに回る立場を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 驥尾に付す(きびにふす):
すぐれた人に従って行けば何かをなしとげられるということ。 - 尻馬に乗る(しりうまにのる):
人の言動に軽々しく調子を合わせること。 - 付和雷同(ふわらいどう):
自分の考えを持たず、人の意見にすぐ従うこと。
「後塵を拝する」と「驥尾に付す」の違い
どちらもすぐれた人の後ろに付いていくことを表しますが、話し手の気持ちが違います。
「後塵を拝する」は先を越された側の悔しさを含み、「驥尾に付す」は自分をへりくだって言うときに使われます。
| 語句 | 込められる気持ち | 使う相手 |
|---|---|---|
| 後塵を拝する (こうじんをはいする) | 先を越された悔しさ | 自分にも他人にも |
| 驥尾に付す (きびにふす) | へりくだる気持ち | 主に自分 |
読み方と意味の注意
読み方
「後塵」は「こうじん」と読みます。
「ごじん」ではありません。
意味の取り違え
すぐれた人につき従うという語義があるため、見習うという良い意味に受け取られることがあります。
今の使い方の中心は、先を越されてみじめな立場に置かれるという含みのほうです。
英語表現
play second fiddle
中心の役割を他人に譲り、脇に回ることを表す言い方。
He was tired of playing second fiddle to his rival.
(彼は競争相手の後塵を拝することに疲れていました。)
lag behind
競争や進み具合で、他より後ろになることを表す表現。
Our sales lagged behind the market leader.
(うちの売上は首位の企業に後れを取りました。)
「塵を望みて拝す」から「後塵を拝する」へ
漢文では「塵を望みて拝す」の形が一般的で、意味も「こびへつらう」ことを表します。
日本語では「後塵を拝する」という形に落ち着き、後ろから付いていくという情景のほうが前に出ました。
そこから「先んじられる」という意味が中心になっています。
へつらいの意味で使った例としては、中里介山の『大菩薩峠』に「其の後塵を拝して納まってゐるか知らん」という一節が残っています。









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