意味
「老少不定」は、老人と若者を指す「老少」に、定まらないという意味の「不定」を重ねた仏教の言葉です。
年齢の順に死が訪れるとは限らないという見方を表します。
人の死に触れる場面や、命のはかなさを説く文脈で使われます。
- 老少(ろうしょう):老人と若者。
- 不定(ふじょう):定まっていないこと。
語源・由来
「老少不定」は、仏教の教えから生まれた言葉です。
もとは仏語で、平安時代の仏書「観心略要集」(1017年)に「老少不定の境」という言い方が出てきます。
『平家物語』の巻一には「年のわかきをたのむべきにあらず、老少不定のさかひなり」とあります。
若さを当てにはできない、ここは老いも若きも死ぬ順の定まらない世界なのだ、という意味です。
使い方・例文
「老少不定」は、思いがけない死に接したときや、命のはかなさを口にする場面で使われます。
- 同期の訃報を聞き、老少不定という言葉が頭をよぎった。
- 老少不定というが、まさか彼が先に逝くとは思わなかった。
- 住職は老少不定と説き、参列者は静かに手を合わせた。
小説での使用例
『こゝろ』(夏目漱石)
先生が自分の死を口にした場面で、奥さんが冗談めかして受け流す言葉として出てきます。
「どうするって、仕方がないわ、ねえあなた。老少不定っていうくらいだから」
読み方に注意
「老少不定」の「不定」は「ふじょう」と読みます。
同じ「不定」を含む「生死不定」も「ふじょう」と読み、「ふてい」とは読みません。
この「じょう」は「定」の呉音、つまり古く日本に伝わった音の系統にあたる読み方です。
類義語・関連語
「老少不定」と同じように、命や物事のはかなさを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 生者必滅(しょうじゃひつめつ):
命あるものは必ず死ぬ運命にあるという教え。 - 諸行無常(しょぎょうむじょう):
万物は絶えず変化し、一刻も同じ状態に留まらないという世の理。 - 人生朝露の如し(じんせいちょうろのごとし):
人の一生は朝露のようにはかなく消えやすいということ。
「老少不定」と「生者必滅」の違い
どちらも仏教から来た言葉で、人が死を免れないことを前提にしている点は同じです。
分かれるのは、死の何について述べているかです。
| 語句 | 述べていること |
|---|---|
| 老少不定 (ろうしょうふじょう) | 死ぬ順番は年齢と関わりなく定まらない |
| 生者必滅 (しょうじゃひつめつ) | 命あるものは必ず死ぬ |
蓮如の手紙に出てくる「老少不定」
室町時代の僧・蓮如が門徒にあてて書いた手紙のうち、「白骨の御文」と呼ばれる一通に「老少不定」が出てきます。
「されば人間のはかなき事は、老少不定のさかひなれば」と述べ、だからこそ早く後生のことを心にかけよ、と勧める箇所です。
この手紙は、朝に紅顔を誇る人も夕べには白骨となると人間の無常を説き、念仏を勧めるものです。
手紙をまとめた『御文』は五帖八十通からなり、真宗の寺院や門徒の間では朝夕のお勤めのときに一通ずつ読み上げる習わしがあるとされます。









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