意味

「百舌の速贄(もずのはやにえ)」とは、モズが捕まえた獲物を、あとで食べるために木の枝などに刺して保存しておく習性、またはその獲物そのものという意味の言葉です。
俳句や短歌で秋の季語として使われます。
- 百舌(もず):くちばしが鉤形に曲がった小鳥。
- 贄(にえ):神に供えるささげ物。
読み方と書き方
読み方
「速贄」は「はやにえ」と読みます。
「贄」は常用漢字の外にある字で、神へのささげ物を表し、単独では「にえ」と読みます。
書き方
一般に使われる表記は「速贄」です。
鳥の名の「もず」のほうは、「百舌」のほかに「鵙」「百舌鳥」とも書きます。
語源・由来
「百舌の速贄」は、平安時代の末にはすでに歌に詠まれていた古い言葉です。
大治3年(1128)ころに成立した源俊頼の私家集『散木奇歌集』には、「垣根にはもずのはやにへたててけり」と歌い出される歌が出てきます。
垣根にモズの速贄が立ててあった、という意味です。
この歌は夏の部に収められ、後半には死出の田長、つまりホトトギスの別名が詠み込まれています。
モズという鳥そのものは、さらに古い『万葉集』にも登場します。
『万葉集』には「秋の野の尾花が末に鳴く百舌鳥の声聞くらむか片聞け吾妹」という一首が出てきます。
秋の野で尾花、つまりススキの穂先に鳴くモズの声を聞いただろうか、少しでも聞いてごらん、といとしい人へ呼びかけた歌です。
『万葉集』は八世紀後半の成立で、そこから約三百五十年後の歌に「もずのはやにへ」が現れます。
使い方・例文
「百舌の速贄」は、秋の野山で枝に刺さった獲物を見かけた場面や、俳句の季語として使われます。
- 生け垣の枝にトカゲが刺さっていた。これが百舌の速贄か。
- 散歩の途中で百舌の速贄を見つけ、しばらく足を止めた。
- 秋の句会では、百舌の速贄を詠んだ一句が話題になった。
類義語・関連語
「百舌の速贄」と同じく、モズにちなんで生まれた言葉には以下のようなものがあります。
- 百舌の生贄(もずのいけにえ):
百舌の速贄を指すもう一つの言い方。 - 百舌の贄刺(もずのにえさし):
モズが獲物を枝に刺しておくことを言い表した呼び名。 - 百舌磔(もずはりつけ):
百舌の速贄を指す、やや古風な呼び方。 - 百舌の草潜(もずのくさぐき):
春になるとモズが人里の近くで見かけられなくなること。 - 百舌勘定(もずかんじょう):
会計のときに自分は金を出さず、他人にばかり負担させるやり方。
「百舌の速贄」と類義語の違い
「百舌の生贄」「百舌の贄刺」「百舌磔」は、いずれも「百舌の速贄」を指す別の呼び方で、意味の違いはありません。
分かれるのは呼び方だけで、指している現象は同じです。
| 語句 | 呼び方の特徴 |
|---|---|
| 百舌の速贄 (もずのはやにえ) | 標準的な呼び方 |
| 百舌の生贄 (もずのいけにえ) | 「速贄」を「生贄」と言い換えた呼び方 |
| 百舌の贄刺 (もずのにえさし) | 突き刺す動作に着目した呼び方 |
| 百舌磔 (もずはりつけ) | やや古風な呼び方 |
「速贄」が指すもうひとつのもの
「速贄」には、モズとは関わりのない二つめの意味もあります。
それは「初物の供え物」で、その年にはじめてとれたものを差し出すことを指します。
急ぎの供え物という説もあります。
『古事記』の上巻には「御代御代、島の速贄献る時に」という一節があり、御代ごとに島の供え物を差し出す場面を述べたものです。
「贄」の字は、神へのささげ物や、天子に納める魚や鳥を指す言葉として使われてきました。









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