意味
「王侯将相いずくんぞ種あらんや(おうこうしょうしょういずくんぞしゅあらんや)」とは、王や大臣になる人も特別な血筋に生まれたわけではなく、その地位は誰にでも開かれているという意味です。
「王や将軍・大臣に、生まれつきの家柄などあるものか」と打ち消す言い方で、身分の低い者が高い地位を目指すときの意気込みを込めて使われます。
- 王侯将相(おうこうしょうしょう):王・諸侯・将軍・大臣など、高い地位にある人々。
- いずくんぞ〜や:「どうして〜だろうか、いやそうではない」と強く打ち消す言い方。
- 種(しゅ):ここでは血筋や家柄のこと。
語源・由来
「王侯将相いずくんぞ種あらんや」は、紀元前209年、秦の圧政のもとで兵役に向かっていた農民の陳勝が、仲間に向けて放った言葉です。
大雨で行軍が遅れ、秦の厳しい法では遅刻がそのまま死罪にあたる状況に追い込まれた陳勝は、呉広とともに、どうせ死ぬなら反乱を起こそうと仲間を鼓舞しました。
この呼びかけは『史記』の「陳渉世家」に登場します。
陳勝はこれより前、若き日に大きな志を仲間に笑われた際、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」(燕やスズメのような小さな鳥に、大きな鳥の志が分かるものか)とも語ったと伝えられており、身分に屈しない生き方を貫いた人物として知られています。
使い方・例文
「王侯将相いずくんぞ種あらんや」は、実力や才覚さえあれば出自に関係なく成功できるという考えを、故事を引いて語る場面で使われます。
- たたき上げで社長になった彼はまさに王侯将相いずくんぞ種あらんやを体現している。
- 王侯将相いずくんぞ種あらんやという言葉どおり、この業界は出身より実力がものを言う。
類義語・関連語
「王侯将相いずくんぞ種あらんや」と同じように、出自にとらわれず実力で地位を築くことを表す言葉には、次のようなものがあります。
- たたき上げ(たたきあげ):
地位の低いところから苦労を重ね、実力で高い地位に至ること。 - 実力主義(じつりょくしゅぎ):
家柄や出自ではなく、実際の能力や成果を重視する考え方。
陳勝の二つの名言は、原文では字が違う
「王侯将相いずくんぞ種あらんや」と「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は、どちらも陳勝の言葉で、「いずくんぞ〜や」という同じ読み方の言い回しを使っています。
ところが『史記』の原文では、前者は「王侯将相寧有種乎」、後者は「燕雀安知鴻鵠之志哉」と書かれており、「いずくんぞ」にあたる字は「寧」と「安」で違います。
漢文を日本語の文として読む「訓読」では、「どうして」の意味で使われる「寧」と「安」を、どちらも「いずくんぞ」と読みます。
そのため訓読した文だけを見ると、二つの句の字の違いは分かりません。
この言葉に「王侯将相寧ぞ種あらんや」という書き方があるのは、原文の「寧」の字を残しているためです。










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