意味
「車軸を流す」とは、雨脚が非常に太く、辺り一面に叩きつけるように降る大雨を指す言い方です。
日常の立ち話よりも、手紙の時候の挨拶や小説の場面描写など、改まった書き言葉で好んで使われる表現です。
語源・由来
「車軸を流す」は、車輪の中心を貫く棒である「車軸」を主語にした言い方です。
今の自動車と違い、昔の牛車などで使われていた車軸は、丸太のように太い木の棒でした。その車軸と同じくらいの太さの水が、空から筋になって落ちてくるように見えるほどの雨、というのがこの言葉の発想です。
「車軸を流す」という言い回しは、鎌倉時代に成立したとされる軍記物語『源平盛衰記』に「折節降る雨車軸を下して、鈴鹿川に洪水漲り下りて」という一節で登場します。
突然の大雨によって鈴鹿川が氾濫する場面を伝える一文で、古くから日本語では、大雨の激しさを車軸という具体的なものの太さにたとえてきたことがわかります。
使い方・例文
「車軸を流す」は、尋常でない大雨の激しさを、書き言葉で印象的に伝えたいときに使われます。
- 台風が接近し、夕方から車軸を流すような雨が降り続いている。
- 外は車軸を流すほどの雨で、傘もほとんど役に立たなかった。
類義語・関連語
「車軸を流す」と同じく、激しい大雨の勢いを具体的なものにたとえた言葉には、次のようなものがあります。
- 篠を突く(しのをつく):束ねた細い竹を地面に突き立てるように、雨が縦に激しく打ちつける様子。
- 盆を覆す(ぼんをくつがえす):水を張った盆をひっくり返したように、大量の雨が一気に降る様子。
「車軸を流す」と類義語の違い
どれも大雨を表す点は共通していますが、雨のどの側面を強調するか、またどんな場面で使われるかに違いがあります。
| 語句 | 強調する点 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 車軸を流す (しゃじくをながす) | 雨脚の太さ | 手紙・小説など書き言葉中心 |
| 篠を突く (しのをつく) | 雨が縦に突き刺す勢い | 書き言葉中心 |
| 盆を覆す (ぼんをくつがえす) | 降る水量の多さ | 日常会話でも使用 |
英語表現
it’s raining cats and dogs
土砂降りの雨を、猫と犬が空から降ってくるという奇抜な比喩で表す口語表現。語源には諸説あるが、英語圏でもはっきりした由来は分かっていない慣用句。
It’s raining cats and dogs outside, so bring an umbrella.
(外は土砂降りだから、傘を持って行きなさい。)
源平盛衰記に描かれた、鈴鹿川をのみこむ豪雨
「車軸を流す」という表現は、14世紀に成立した軍記物語『源平盛衰記』に見えます。
「降る雨車軸を下して、鈴鹿川に洪水漲り下りて」という一節があり、激しい雨によって鈴鹿川が氾濫する場面で使われています。
牛車などの車輪を支える太い心棒である車軸ほどの太さの雨筋が、束になって降り注ぐという情景を借りて、雨脚の激しさを表した言葉です。
同じ『源平盛衰記』には「降る雨は車軸の如く」という形でも登場しており、当時すでに豪雨を形容する決まった言い回しとして使われていたことがうかがえます。









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