意味
「陽奉陰違(ようほういんい)」とは、表向きは命令に従うふりをしながら、陰でそれに背くことという意味です。
命令や決まりに対しては、上辺の態度と本心が正反対になります。
- 陽奉(ようほう):表向きは命令に従うこと。
- 陰違(いんい):人目のないところでそれに背くこと。
語源・由来
この言葉は、「陽(= 表向き)」と「陰(= 陰で)」、「奉(= 従う)」と「違(= 背く)」をそれぞれ対にして組み合わせた四字熟語です。
清代末期の小説『官場現形記』(= 役人の世界の内幕を暴いた風刺小説)の第三十三回には、次のように使われています。
只見上面寫的無非勸戒屬員嗣後不准再到秦淮河吃酒住夜,倘若陽奉陰違,定行參辦不貸各等語。
(そこに書かれていたのは、部下の役人たちに対し、今後は秦淮河へ酒を飲みに行って泊まってはならない、もし表向きは従うふりをして陰で背くようなことがあれば、必ず罰して容赦しない、という戒めの言葉ばかりであった。)
使い方・例文
陽奉陰違は、命令や取り決めに背きながら従うふりをする不誠実な態度を、批判を込めて指摘するときに使います。
中国語の成語で、日本語の文章で使われることはまれです。
日本語では、意味の近い「面従腹背」が広く使われます。
- 新方針に賛成すると言いながら旧来のやり方を続ける社員は陽奉陰違だ。
- 条約を守ると約束しながら実行が伴わない国の姿勢は陽奉陰違と評された。
- 上司は、命令に従うふりをして実際には聞き入れない部下を陽奉陰違だと叱った。
類義語・関連語
表向きの態度と本心が食い違うことを表す言葉です。
「陽奉陰違」と類義語の違い
三つの語とも、表向きの態度と本心が食い違う点は共通します。
命令や決まりに背く場面では面従腹背とほぼ同じ意味で使えますが、口蜜腹剣は人を陥れようとする積極的な悪意に重点がある点で異なります。
| 語句 | 焦点 | 対象 |
|---|---|---|
| 陽奉陰違 (ようほういんい) | 命令・決まりへの表向きの服従 | 主に規則や命令 |
| 面従腹背 (めんじゅうふくはい) | 服従を装った反抗・裏切り | 主に上位者 |
| 口蜜腹剣 (こうみつふくけん) | 甘言に隠した加害の意図 | 主に人への接し方 |
英語表現
Pay lip service to
実行する気がないのに、表向きだけ賛成や協力の言葉を述べること。
The manager only pays lip service to the new safety rules while ignoring them in practice.
(その責任者は新しい安全規則に口先では賛成しているが、実際には無視している。)
台湾の議員は憲法解釈の申立書で「陽奉陰違」と訴えた
台湾の司法院大法官(= 憲法の解釈を行う裁判官)が1998年に出した第463号解釈は、教育・科学・文化の予算の比率を定めた憲法の条文をめぐるものです。
解釈を求めた立法委員(= 国会議員)85人の申立書に、この四字の形が次のように使われています。
但省、縣政府主計單位仍以憲法並無明文規定為由,陽奉陰違。
(しかし、省と県の政府の会計部門は、憲法に明文の規定が無いことをなお理由にして、表向きは従いながら陰で背いている。)
郷や鎮(= 町村にあたる単位)の予算も県の予算に含めて比率を計算するよう行政院が示していたのに、省と県がそれを守っていないと訴えた一節です。

コメント