「早くしなきゃ」と焦って作業をしてミスを連発したり、急いで買い物をしたら損をしてしまったり。
そんな「急いだせいでかえって損をした」という経験はありませんか?
「慌てる乞食は貰いが少ない」は、そんな状況を戒めることわざです。
非常に有名な言葉ですが、実は現代社会で使用する際には、言葉の中に含まれる表現について注意が必要な側面もあります。言葉の本来の意味や背景に加え、現代での適切な扱い方についても解説します。
「慌てる乞食は貰いが少ない」の意味・教訓
慌てる乞食は貰いが少ないとは、焦って行動すると、かえって失敗したり損をしたりするという意味です。
物乞いをする人が、我先にとガツガツ貰おうとすると、施す人から「卑しい」と思われて何も恵んでもらえない、あるいは落ち着いていればもっと多く貰えるはずのものが貰えなくなる、という情景が元になっています。
ここから転じて、以下の教訓を表します。
- 冷静さの重要性:利益を得ようとして焦ると、視野が狭くなり、結果として成果が小さくなる。
- 落ち着いた振る舞い:ゆったりと構えている方が、相手に安心感を与え、良い結果を招くことがある。
【重要】 現代での使用に関する注意点
このことわざには「乞食(こじき)」という言葉が含まれています。
かつては一般的な表現でしたが、現在では身体的・経済的なハンディキャップを持つ人々への差別的なニュアンスを含む言葉(放送禁止用語扱い)とされることが一般的です。
そのため、公的な場、ビジネスシーン、不特定多数に向けた文章などで使用することは避けたほうが無難です。意味自体は有用な教訓ですが、他人にアドバイスをする際は、後述する「急いては事を仕損じる」や「急がば回れ」などの類義語で言い換えることを強く推奨します。
「慌てる乞食は貰いが少ない」の語源・由来
このことわざに特定の原典(書物など)はありませんが、古くから庶民の間で語り継がれてきた「生活の知恵」の一つです。
江戸時代の生活風景
由来は、江戸時代などの古い時代の生活風景にあると考えられています。当時、実際に路上などで物乞いをする人々(乞食)の姿は日常の一部でした。
人々は彼らを観察する中で、「必死になって駆け寄ってくる者よりも、静かに座っている者の方に、人は哀れみや情けを感じて物を恵みたくなる」という人間心理や、「焦っている者は食べ物をこぼしたり、好機を逃したりする」という現実を見て取り、そこからこの教訓が生まれたとされています。
「慌てる乞食は貰いが少ない」の使い方・例文
現代では公的な使用は控えるべきですが、文学作品の中や、気心の知れた間柄での会話、あるいは自分自身を戒める言葉として使われることがあります。
例文
- 株価が上がったからといってすぐに飛びつくと、「慌てる乞食は貰いが少ない」という結果になりかねない。
- 遅刻しそうで駅まで走ったが、財布を忘れて戻る羽目になった。まさに「慌てる乞食は貰いが少ない」だ。
- テスト終了間際に焦って答えを書き直したら、元の方が合っていた。「慌てる乞食は貰いが少ない」とはこのことだ。
「慌てる乞食は貰いが少ない」の類義語(言い換え表現)
現代において、同じ意味をより穏当な表現で伝えたい場合は、以下の類義語を使うのが適切です。
- 急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる):
焦ってやると、やり損なうことが多いという教訓。最も一般的で使いやすい言い換え表現。 - 急がば回れ(いそがばまわれ):
急ぐときほど、危険な近道よりも安全な遠回りを選んだほうが、結果的に早く着くということ。 - 短気は損気(たんきはそんき):
短気を起こすと、結局は自分が損をするということ。 - 待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり):
焦らずに待っていれば、そのうちチャンス(好機)がやってくるというたとえ。
「慌てる乞食は貰いが少ない」の対義語
「急ぐべきだ」「早いほうがいい」という逆の視点を持つ言葉です。
- 善は急げ(ぜんはいそげ):
良いと思ったことは、ためらわずにすぐ実行すべきだということ。 - 先んずれば人を制す(さきんずればひとをせいす):
人よりも先に行動を起こせば、有利な立場に立てるということ。 - 早い者勝ち(はやいものがち):
早く来た者が利益を得ること。
「慌てる乞食は貰いが少ない」の英語表現
英語にも同様の教訓を持つことわざがいくつか存在します。
Haste makes waste.
- 直訳:急ぐことは無駄を作り出す。
- 意味:「急いては事を仕損じる」
- 解説:最も一般的な英語の格言です。韻を踏んでおり覚えやすいフレーズです。
- 例文:
Slow down and check your work. Haste makes waste.
(落ち着いて確認しなさい。慌てる乞食は貰いが少ないよ。)
A hasty man never wants woe.
- 直訳:短気な男には悲嘆(悩み)が欠くことがない。
- 意味:「短気は損気」「慌てる乞食は貰いが少ない」
- 解説:焦ってばかりいると、常にトラブルや嘆きを抱えることになるという意味です。
まとめ – 余裕こそが最大の利益
「慌てる乞食は貰いが少ない」は、目先の利益を追って焦ることの愚かさを、強烈なイメージと共に伝える言葉です。
現代では言葉の選び方に配慮が必要ですが、「心に余裕がないときほど、手に入る成果は小さくなる」という真理は変わりません。
何かに追われていると感じたときこそ、この教訓を思い出し、一呼吸置く勇気を持ちたいものです。







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