理不尽な攻撃を受け、怒りに震えるような経験。
受けた苦しみと同じだけの代償を相手に払わせたいと願う心理は、古今東西を問わず人間に備わっているものです。
そんな、受けた被害と同等の報復を行う様子を、
「目には目を、歯には歯を」と言います。
意味
「目には目を、歯には歯を」とは、相手から受けた被害に対して、それと同等の報復を行うことを指します。
現代では「やられたらやり返す」という復讐の代名詞として使われますが、本来は「報復は受けた被害と同等までにとどめるべき」という、過剰な復讐を禁じる法的な原則を示しています。
語源・由来
「目には目を、歯には歯を」の起源は、紀元前18世紀頃の古代メソポタミアで制定された「ハンムラビ法典」にあります。
この法典には「平民が他の平民の目を潰したならば、その者の目も潰されなければならない」といった趣旨の規定が記されていました。
これは一見すると残酷な処罰に思えますが、当時の社会では「やられたら、それ以上の倍返しをする」という際限のない報復の連鎖が問題となっていました。
「受けた傷以上にやり返してはならない」という公平なルールを定めることで、報復の泥沼化を防ぐ知恵でもあったのです。
後にこの考え方は、旧約聖書の「出エジプト記」などにも引用され、世界的に知られる言葉となりました。
使い方・例文
「目には目を、歯には歯を」は、相手の攻撃に対して一歩も引かずに同じ手段で対抗する場面や、厳格な処罰を求める文脈で用いられます。
例文
- 競合他社の不当な値下げに対し、「目には目を、歯には歯を」で対抗する。
- 「おもちゃを壊されても、目には目を、歯には歯をでやり返してはいけないよ」
- 卑劣な攻撃を仕掛けてくる相手に、「目には目を、歯には歯を」の姿勢で臨む。
文学作品・メディアでの使用例
この言葉は、報復の是非を問う古典的なテーマとして、多くの著作に登場します。
『旧約聖書』(出エジプト記 第21章24節)
この言葉の最も古い成文化された記録の一つであり、法の正義を示す場面で語られます。
目には目、歯には歯、手には手、足には足。
類義語・関連語
「目には目を、歯には歯を」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 同害報復(どうがいほうふく):
加害者が与えた被害と等しい苦痛や損害を、刑罰として加害者に与えること。 - 目には目(めにはめ):
「目には目を、歯には歯を」を短縮した表現。 - 意趣返し(いしゅがえし):
受けた恨みを晴らすために、相手に仕返しをすること。
対義語
「目には目を、歯には歯を」とは対照的な、許しや無抵抗を説く言葉です。
- 右の頬を打たれたら、左の頬をも向けよ(みぎのほほをうたれたら、ひだりのほほをもむけよ):
新約聖書にある言葉で、敵対する相手に対しても報復せず、無抵抗と寛容さをもって接することを教えるもの。 - 徳を以て怨みに報ゆ(とくをもってうらみにむくゆ):
自分を害した相手を恨まず、逆に恩徳をもって接すること。
英語表現
「目には目を、歯には歯を」を英語で表現する場合、以下の定型句が使われます。
An eye for an eye, a tooth for a tooth.
- 意味:「目には目を、歯には歯を」
- 解説:聖書由来の極めて一般的な表現であり、日本語と全く同じ構成で使われます。
- 例文:
The principle of an eye for an eye is found in ancient laws.
(「目には目」の原則は古代の法律の中に見られる。)
報復の制限という側面
「目には目を、歯には歯を」という言葉には、復讐を煽るだけでなく、実は「自制」という深い教訓が含まれています。
人が怒りに任せて報復しようとすると、往々にして受けた被害以上の苦痛を相手に与えようとしてしまうものです。
しかし、それでは憎しみの連鎖が止まりません。
「目には目まで」と上限を設けることは、社会の秩序を維持するための、冷徹ながらも公平な配慮だったのです。
現代の人間関係においても、感情の暴走を抑えるための一つの視点として捉えることができるかもしれません。
まとめ
相手から受けた被害に対して同等の報復を行うことを意味する「目には目を、歯には歯を」。
その語源をたどれば、単なる復讐の肯定ではなく、過剰な争いを避けるための古代の厳格な正義がありました。
現代に生きる私たちにとっても、この言葉は「正当な権利」と「報復の自制」のバランスを考えるきっかけになることでしょう。
激しい感情に揺さぶられたとき、この言葉の歴史的な背景を思い出すことが、冷静な判断への助けになるかもしれません。





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