意味
「胸を弾ませる(むねをはずませる)」とは、うれしさや期待で、心がわくわくと浮き立つという意味です。
ここでいう「胸」は、体の部分ではなく心のことです。
使い方・例文
「胸が弾む」の形でも、同じ意味で使います。
- 修学旅行の前の晩、弟は胸を弾ませて荷物を何度も詰め直していた。
- 合格の知らせを受け、彼女は胸を弾ませながら家族に電話をかけた。
- 旅行の日が近づくにつれて、胸が弾む。
堀辰雄『美しい村』の雨上がりの朝
『美しい村』(堀辰雄)で、避暑地の村に滞在する「私」が、雨続きの朝に雨戸を開けようとする場面です。
雨戸の節穴から差し込んだ光が、障子に外の落葉松を逆さに映しているのを見て、「私」は晴れていると気づきます。
雨音だと思っていたのは、葉に溜まった雨粒が屋根に落ちる音でした。
「また雨らしいな……」と溜息をつきながら私が雨戸を繰ろうとした途端に、その節穴から明るい外光が洩れて来ながら、障子の上にくっきりした小さな楕円形の額縁をつくり、そのなかに数本の落葉松の微細画を逆さまに描いているのを認めると、私は急に胸をはずませながら、出来るだけ早くと思って、そのため反って手間どりながら雨戸を開けた。
類義語・関連語
英語表現
one’s heart leaps
うれしい知らせなどで、胸が躍ること。
直訳は「心臓が跳ね上がる」。
My heart leapt when I saw my name on the list of winners.
(受賞者の一覧に自分の名前を見つけて、胸が弾んだ。)
「弾む」には気前よく出す意味も
「弾む」は、もとはボールのような物が何かに当たって、勢いよく跳ね返ることをいいます。
勢いに乗って活気づくことにも使い、「胸が弾む」「話が弾む」はこちらです。
この語には、お金や品物を気前よく出すという意味もあり、「チップを弾む」「祝儀(= お礼や心付けとして渡すお金)を弾む」がその使い方です。
森鴎外の小説『百物語』(1911年)では、百物語の会に招かれた語り手が、花火見物の屋根船を漕ぐ船頭の真面目な顔を見て、こう思います。
「飾磨屋」は、この会を開いた主人の名です。
飾磨屋の事だから、定めて祝儀もはずむのだろうに、嬉しそうには見えない。
「定めて」は「きっと」の意味で、気前のいい主人の舟なのだから、船頭もきっとたっぷり祝儀をもらえるだろう、と語り手は考えたのです。
主人が祝儀を弾んでも、船頭の胸までは弾まないようです。









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