意味
「時は得難くして失い易し(ときはえがたくしてうしないやすし)」とは、物事を行うのに絶好の機会はなかなか巡ってこないが、一度訪れても油断しているとすぐに過ぎ去ってしまうという意味です。
また、時間は再びめぐって来ないものだから、どんな短い時間も大切にしなければならない、という意味でも使われます。
語源・由来
「時は得難くして失い易し」は、中国の古典に見える「時難得而易失」を読み下した言葉です。
思想書『淮南子』の原道訓にこの句があり、歴史書『史記』の「淮陰侯列伝」では、策士が将軍を説く言葉の中に出てきます。
紀元前、漢の時代。
策士の蒯通が、実力者であった将軍の韓信に対し、「今こそ独立して天下を狙う好機です」と進言しました。
その際に説いたのが、次の一節です。
夫功者難成而易敗,時者難得而易失也。時乎時,不再來。
(そもそも功業は成しがたく敗れやすく、時機は得がたく失いやすいものです。時よ時よ、二度とは来ません)
しかし、韓信はこの忠告を聞き入れず、結局はチャンスを逃して非業の死を遂げることになります。
この歴史的なエピソードが転じて、現代でも機会を逃さないための戒めとして使われるようになりました。
使い方・例文
「時は得難くして失い易し」は、目の前のチャンスに対して決断を迷っている時や、時間の尊さを再認識させる場面で使われます。
例文
- キャプテンに推薦された。時は得難くして失い易しだ。勇気を出して引き受けよう。
- 欲しかった限定品が再入荷した。時は得難くして失い易し、今買っておこう。
- 時は得難くして失い易し。今しかないと判断し、彼は辞表を出した。
- 家族で過ごす穏やかな時間は、時は得難くして失い易しだ。この一瞬を大切にしたい。
類義語・関連語
「時は得難くして失い易し」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 好機逸すべからず(こうきいっすべからず):
絶好の機会は、逃さずに利用しなければならないということ。 - 光陰矢の如し(こういんやのごとし):
月日が経つのが、放った矢のように非常に早いこと。 - 歳月人を待たず(さいげつひとをまたず):
年月は人の都合などお構いなしに過ぎ去るため、時間を無駄にするなという戒め。
対義語
「時は得難くして失い易し」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり):
今は状況が悪くても、焦らずに待っていればいつか幸運な機会が巡ってくるということ。 - 急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる):
何事も焦って行うと、かえって失敗しやすい。急ぐ時こそ落ち着いて行動すべきだということ。
英語表現
「時は得難くして失い易し」を英語で表現する場合、以下の表現が適しています。
Opportunity knocks but once
「チャンスは一度しか扉を叩かない」
好機は一度逃すと二度と巡ってこないという意味で、最もニュアンスが近い表現です。
Don’t hesitate to take the exam. Opportunity knocks but once.
(試験を受けるのをためらってはいけません。チャンスは一度きりです。)
Make hay while the sun shines
「日の照っているうちに干し草を作れ」
好都合な条件が整っているうちに、物事を済ませておくべきだという教訓です。
Let’s finish the garden work today. We should make hay while the sun shines.
(今日中に庭仕事を終わらせよう。好機を逃してはいけない。)
時は得難くして失い易しを説いた蒯通、劉邦に許される
韓信が処刑されたとき、劉邦は蒯通を斉から捕らえさせました。
反乱をそそのかしたのかと問われた蒯通は、そのとおりだと認めたうえで、あの者が私の計を用いなかったから自滅したのだと答えます。
続けて、秦が天下を失って多くの者が争ったあの時、自分は韓信を知るだけで陛下を知らなかった、陛下の位を望む者を全員殺せますか、と述べました。
『史記』の淮陰侯列伝によれば、劉邦はこれを聞いて蒯通を釈放しています。












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