勤勉に働き続けていれば、貧乏に追いつかれることはないという教え。
このような勤労の知恵を表すのが、「稼ぐに追いつく貧乏なし」(かせぐにおいつくびんぼうなし)です。
意味
「稼ぐに追いつく貧乏なし」とは、常に精を出して一生懸命に働いていれば、貧乏に苦しむことはないという意味です。
怠けずにコツコツと働き続けていれば、やがて生活は安定し、貧しさを振り払うことができるという勤労の奨励を説いています。
どれほど苦しい状況であっても、自ら手を動かすことで活路を見出そうとする力強い響きを持っています。
- 稼ぐ:お金を得るために精を出して働く。
- 貧乏(びんぼう):生活が苦しく、お金や物がない状態。
語源・由来
「稼ぐに追いつく貧乏なし」は、戦国時代末期の言葉を記録した『北条氏直時分諺留(ほうじょううじなおじぶんことわざどめ)』という文献に登場します。
特定の人物による創作ではなく、古くから庶民の間で受け継がれてきた生活の知恵でした。
江戸時代には「尾張(名古屋)いろはかるた」の読み札に採用されたことで、日本中に定着しました。
当時の「か」の札は地域によって異なり、江戸では「勝って兜の緒を締めよ」が選ばれていました。
飢饉や戦乱などで明日をも知れぬ生活を送っていた人々にとって、この言葉は「足を止めずに働き続けること」こそが唯一の救いであるという切実な願いとともに広まりました。
使い方・例文
「稼ぐに追いつく貧乏なし」は、生活への不安を感じている人を励ます場面や、仕事への意欲を高める際に使われます。
- 祖母は稼ぐに追いつく貧乏なしと口にして、晩年まで畑仕事を楽しんでいた。
- 景気が悪くてボーナスがかなり減ったが、稼ぐに追いつく貧乏なしだ。今は辛抱して働こう。
内容に即した見出し
『貧乏神』(芥川龍之介)
落語や古典を題材にした短編の中で、勤勉な人間を前にした貧乏神が去り際に呟くセリフとして引用されています。
「稼ぐに追いつく貧乏なし」と云ふこともありますから、私などもさういつまでも、お邪魔をしては居られません。
類義語・関連語
「稼ぐに追いつく貧乏なし」と同様に、努力や勤勉さの重要性を説く言葉には以下のようなものがあります。
- 稼ぐが勝ち(かせぐがかち):
理屈を言うよりも、実際に働いて利益を得るほうが結局は得策であるという考え。 - 天は自ら助くる者を助く(てんはみずからたすくるものをたすく):
他人に頼らず努力する人には、天の助けがあって幸福が訪れるという教え。 - 早起きは三文の徳(はやおきはさんもんのとく):
朝早く起きて仕事をすれば、わずかであっても必ず利益があるという戒め。 - 働かざる者食うべからず(はたらかざるものくうべからず):
働く能力があるのに働かない怠け者は、食べる権利がないという厳しい教え。
「稼ぐに追いつく貧乏なし」と類義語の違い
どちらも「貧乏」と「働くこと」を組み合わせた言葉ですが、働くことの結果を前向きに捉えるか、現状の苦しさを嘆くかという点に大きな違いがあります。
| 語句 | 使える状況 | 決定的な違い |
|---|---|---|
| 稼ぐに追いつく貧乏なし (かせぐにおいつくびんぼうなし) | 努力を推奨する時 | 働けば報われるという希望。 |
| 貧乏暇なし (びんぼうひまなし) | 現状を嘆く時 | 貧しさゆえの忙しさ。 |
対義語
「稼ぐに追いつく貧乏なし」とは対照的に、労働のあり方や不運を指す言葉です。
- 怠け者の節句働き(なまけもののせっくばたらき):
普段は怠けている者が、皆が休む祝日に限ってわざわざ忙しく働くという皮肉。 - 運根鈍(うんこんどん):
成功には運と根気、そして粘り強さが必要であり、ただ稼ぐだけでは足りないという対比。
英語表現
Industry keeps poverty away
勤勉さが貧困を遠ざけるという、教訓に近い表現。
Keep working hard. Industry keeps poverty away.
(一生懸命働きなさい。稼ぐに追いつく貧乏なしだよ。)
Poverty runs after idleness
怠けていると貧乏が追いかけてくるという、警告のニュアンスを含んだ表現。
Be careful not to be lazy. Poverty runs after idleness.
(怠けないように気をつけなさい。貧乏は怠け者の後を追うものだ。)
貧乏神を振り切るための速度
この言葉には、働く人と貧乏神が追いかけっこをしているような情景が浮かびます。
江戸時代には「稼ぐに追い抜く貧乏神」という洒落(しゃれ)が存在しました。
これは、いくら働いても貧乏神の足が速くて追い抜かれてしまうという、当時の庶民の苦境を自嘲した表現です。
一方で、本来の教訓は「働き者の足が速ければ貧乏神は追いつけない」という物理的な例えに基づいています。
明治時代の実業家・浅野総一郎が、冷たい水の行商から始めて巨大な財閥を築く際に、この言葉を人生の指針にしたと伝えられています。







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