意味
「色を正す(いろをただす)」とは、表情を改めて、きりっと引き締まった顔つきになるという意味で、「色を正して語り始める」のように、「色を正して〜する」の形でよく使われます。
軽い場面では使われず、重要な話を切り出す前や、失礼のない対応が求められる場面など、緊張感を伴う改まった状況で用いられます。
- 色(いろ):ここでは顔つきや表情を指す。
- 正す(ただす):乱れたものを整えること。
語源・由来
「色を正す」の「色」は顔色や表情のことで、漢文にはこの意味の「色」を使った「正色」という言い方があります。
書き下すと「色を正す」となり、中国の歴史書や逸話集には、「正色曰」(色を正していわく)、つまり表情を改めて言った、という書き方が数多く出てきます。
『論語』泰伯篇でも、病に伏した孔子の弟子曾子が、君子が大切にする三つの心がけの一つとして、顔色を正すこと(原文は「正顔色」)を挙げています。
こうした漢文の言い回しが日本語に取り入れられ、「色を正す」という言い方が定着したとみられます。
使い方・例文
- 部長は色を正して、事業の今後について語り始めた。
- 彼女は色を正し、面接官の質問に真剣に答えた。
- 先生は色を正して、生徒たちに大切な話を伝えた。
類義語・関連語
「色を正す」と同様に、態度や姿勢を改める様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 居住まいを正す(いずまいをただす):
姿勢を整え、真剣な態度をとること。 - 襟を正す(えりをただす):
気持ちを引き締め、真剣な態度で臨むこと。
「色を正す」と「襟を正す」の違い
両者とも真剣な態度への切り替えを表しますが、注目する部分に違いがあります。
「色を正す」は表情の変化に焦点があるのに対し、「襟を正す」は姿勢や心構え全体の引き締めに重点があります。
英語表現
put on a serious face
真剣な表情になる、顔つきを引き締めるという意味の表現。
He put on a serious face and began to speak.
(彼は色を正して話し始めた。)
「正色」と「失色」は、『世説新語』の同じ話に並んで出てくる
「色を正す」にあたる漢文の「正色」は、『世説新語』(= 後漢の末から東晋までの名士の逸話を集めた書物)では「失色」と同じ話の中に出てきます。
晋の文人陸機は、大勢のいる席で盧志から、祖父の陸遜と父の陸抗の名を挙げて、君とはどういう間柄かと尋ねられました。
陸機は、盧志の祖父と父の名を挙げ返して、君とその二人の間柄と同じだと答えます。
そばにいた弟の陸雲は「失色」、つまり顔色を失いました。
外に出てから、そこまで言わなくても、相手は本当に知らなかったのかもしれないと言う弟に、陸機は「正色」、つまり色を正して、父や祖父の名は天下に知れ渡っているのに知らないはずがあるものかと答えています。











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