意味
「烏の濡れ羽色(からすのぬればいろ)」とは、カラスの羽根が水に濡れたときに見せる、青みがかった艶やかな黒色を指す言葉です。
つややかな黒髪をほめる言葉で、多くは女性の髪に使います。
- 烏(からす):全身が黒い羽毛で覆われた鳥。
- 濡れ羽(ぬれば):水に濡れてつやを増した羽。
- 色(いろ):色合い、色調のこと。
語源・由来
カラスの羽は黒一色ではなく、光の当たり方によって青や緑、紫を帯びたつやを見せます。
水に濡れたカラスの羽が見せるしっとりとしたつやを、つややかな黒髪に重ねた言葉です。
「濡れ羽色」は、色の名前としても使われています。

(写真:Datenwolf、Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0)
使い方・例文
つやのある美しい黒髪をほめる、詩的で上品な表現です。
髪のほかの黒い物(服や日焼けした肌など)には使いません。
日常会話よりも、小説や歌詞などの書き言葉で見かける言葉です。
- 結い上げた烏の濡れ羽色の髪に、白いかんざしがよく映えていた。
- 椿油でとかした娘の髪は、灯りを受けて烏の濡れ羽色に光った。
- 湯上がりの姉の長い髪は、烏の濡れ羽色につやめいていた。
類義語・関連語
- ぬばたまの黒髪(ぬばたまのくろかみ):
万葉集などに見られる、黒くつややかな髪を表す古い言葉。「ぬばたま」はヒオウギという草の黒い実のこと。
英語表現
raven-black hair
「カラスのように黒い髪」という意味です。
「raven」はワタリガラスのことで、その黒くつややかな羽の色を美しい黒髪にたとえています。
日本語の「烏の濡れ羽色」と発想がよく似ています。
She had long, raven-black hair that shone in the sunlight.
(彼女は太陽の光に輝く、烏の濡れ羽色の長い髪をしていた。)
jet-black hair
「漆黒の髪」という意味です。
「jet」は黒玉(= 大昔の木が化石になってできた黒い石)のことで、深みのあるつややかな黒を表します。
His jet-black hair made him stand out in the crowd.
(彼の漆黒の髪は、人混みの中でもひときわ目立っていた。)
鷗外訳『即興詩人』の「からすば色」の髪
明治の文豪・森鷗外が訳したアンデルセンの小説『即興詩人』に、少女の黒髪を烏の羽の色でほめる場面があります。
9歳の主人公アントニオは、ローマのアラチエリの寺で、年ごとの習わしに従って子どもが務める聖誕祭(= クリスマス)の説教に立ち、いちばん人々に気に入られたのは自分だと信じていました。
ところが次に台に立った小さな女の子を見て、人々は「神のみつかひ(= 天使)」のようだとささやきます。
母もその子の「怪しく濃き目の色、鴉青いろの髮」を繰り返しほめ、自分のことも天使にたとえてくれたのに、アントニオの胸には妬ましさがわき起こりました。
「からすば色(烏羽色)」は烏の羽のように青みを帯びたつやのある黒をいう色名で、「烏の濡れ羽色」と同じく黒髪を烏の羽にたとえています。
鷗外はこの「からすば」に「鴉青」と、青の入った字を当てました。











コメント