意味
「立つ瀬がない(たつせがない)」とは、面目をつぶしてしまい、身を置く場所も逃げ場も無くなってしまうという意味です。
弁明の余地もないまま、周囲からの信頼や評価を失った、逃げ場のない状況を表す際に使われます。
- 瀬(せ):川の中で浅く、歩いて渡れる場所。
- 立つ:足場にして立っていること。
語源・由来
「立つ瀬がない」は、川の地形を表す言葉から生まれた表現です。
川には、水が深くよどんだ「淵」と、浅くて歩いて渡れる「瀬」があります。
この、安心して立っていられる浅瀬を「立つ瀬」と呼び、そこが見つからずに溺れそうになる状況を、面目や居場所を失って身の置きどころがない心境に重ね合わせた表現と考えられます。
使い方・例文
「立つ瀬がない」は、面目を失い、弁明の余地もなくなった場面で使われます。
- 部下の前で上司に叱られ、立つ瀬がない。
- 約束を破られた上に責められては、こちらの立つ瀬がない。
- 味方にまで反対されては、立つ瀬がない。
類義語・関連語
「立つ瀬がない」と同じように、面目を失う様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 面目丸つぶれ(めんぼくまるつぶれ):
評判や名誉が完全に失われること。 - 肩身が狭い(かたみがせまい):
周囲に引け目を感じ、堂々と振る舞えないこと。
「立つ瀬がない」と「面目丸つぶれ」の違い
どちらも面目を失う点は共通していますが、視点が異なります。
「立つ瀬がない」は自分の立場や逃げ場そのものが失われる状況を、「面目丸つぶれ」は評判や体面が損なわれる結果を強調します。
英語表現
have nowhere to turn
直訳「向かう先がない」で、頼る先もなく追い詰められた状況を表す表現。
After being blamed by everyone, she had nowhere to turn.
(皆に責められ、彼女は立つ瀬がなかった。)
尾崎紅葉は「立つ瀬はあらず」と書いた
明治の作家尾崎紅葉が1895年(明治28年)に読売新聞に連載した小説『不言不語』に、この言い回しが出てきます。
ある家に奉公する若い女性の手記の形で、主人夫婦のひどい不仲のわけが明かされていく物語です。
語り手の女性は、夫婦の仲を取り持とうとして苦労した自分のことを、次のように書いています。
御為を思ひながら、よしなき恨を受け、且は憂き名を負ひて、立つ瀬はあらず
(お仕えする方のためを思ったのに、いわれのない恨みを受け、そのうえつらい評判まで背負って、身の置きどころがない)
紅葉は、昔の書き言葉の「立つ瀬はあらず」の形で、今の「立つ瀬がない」と同じ意味に使っています。










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