腹八分目に医者いらず

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ことわざ 慣用句
腹八分目に医者いらず
(はらはちぶんめにいしゃいらず)
短縮形:腹八分目/腹八分
異形:腹八分に医者いらず

14文字の言葉は・ば・ぱ」から始まる言葉

「好きなものを好きなだけお腹いっぱい食べたい!」
美味しい食事を目の前にすると、誰もがそう思うものでしょう。しかし、食後の胃もたれや、年々気になる健康診断の数値に後悔した経験はないでしょうか。

昔から「腹八分目に医者いらず」と言われるように、食事の量をコントロールすることは、どんな薬にも勝る健康法として知られています。

「腹八分目に医者いらず」の意味

食事を満腹になるまで食べず、「もう少し食べたい」と感じる程度(八分目)に抑えておけば、健康を維持でき、医者にかかる必要がなくなるということ。

このことわざは、単なる精神論ではなく、暴飲暴食が胃腸に負担をかけ、万病のもとになるという身体の仕組みに基づいた教訓です。

  • 腹八分目(はらはちぶんめ):満腹ではないが、空腹でもない状態。胃の容量の80%程度。
  • 医者いらず:病気にならないため、医者の世話になる必要がないこと。

「腹八分目に医者いらず」の由来・背景

この言葉の明確な初出を特定することは難しいですが、古くから日本の「養生(ようじょう)思想」の中で語り継がれてきました。

貝原益軒『養生訓』の教え

江戸時代の儒学者であり、84歳まで生きた長寿の賢人、貝原益軒(かいばらえきけん)が記した健康指南書『養生訓』には、このことわざの精神的支柱となる教えが記されています。

飲食は、ほっして後食し、食して後飽かず。(中略)小食なれば脾胃(ひい)のわざ少しやすし。

つまり、「空腹になってから食べ、満腹になる前に箸を置きなさい。
少食ならば胃腸の負担が軽い」と説いています。益軒自身、若い頃は病弱でしたが、この節制を徹底することで長寿を全うしました。
この教えが庶民の間で分かりやすいことわざとして定着したと考えられます。

「腹八分目」は科学的にも正しい?

現代医学の視点から見ても、このことわざは非常に理にかなっていることが分かっています。

  • 長寿遺伝子の活性化
    カロリー摂取を適度に制限(満腹の70〜80%程度)すると、老化を遅らせる「サーチュイン遺伝子」が活性化するという研究報告があります。
  • 消化器官の休息
    満腹まで食べると、消化のために胃腸が長時間働き続けることになります。八分目に抑えることで内臓を休ませる時間ができ、免疫力の維持につながります。

昔の人は経験則として、最新科学と同じ結論に達していたと言えるでしょう。

「腹八分目に医者いらず」の使い方・例文

日常会話では、食事の場面でのアドバイスや、食べ過ぎてしまった自分への戒めとして使われます。

例文

  • 最近胃の調子が悪いので、「腹八分目に医者いらず」を心がけて夕食を軽めにしている。
  • バイキングに行くと元を取ろうとしてしまうが、「腹八分目に医者いらず」と言うし、ほどほどにしておこう。
  • 祖父は「腹八分目に医者いらず」を実践し続けているおかげか、90歳になっても足腰が丈夫だ。

「腹八分目に医者いらず」の類義語

健康と食事に関する類似のことわざは多く存在します。

  • 腹も身の内(はらもみのうち):
    暴飲暴食を慎めという教え。胃袋も自分の体の一部なのだから、大切にいたわれという意味。
  • 大食短命(たいしょくたんめい):
    大食いの人は、胃腸を酷使するため早死にする傾向があるということ。
  • 節制は最良の薬(せっせいはさいりょうのくすり):
    欲望を抑えて度を越さないことが、どんな薬よりも健康に良いということ。西洋のことわざ。

ニュアンスの違い

  • 腹八分目に医者いらず:食事の「量」(八分目)に焦点を当てた具体的なアドバイス。
  • 腹も身の内:身体をいたわる「心構え」を説く言葉。

「腹八分目に医者いらず」の対義語

直接的な対義語はありませんが、反対の状態を表す言葉として以下のようなものがあります。

  • 暴飲暴食(ぼういんぼうしょく):
    むやみに酒を飲み、度を過ごして食べること。
  • 鯨飲馬食(げいいんばしょく):
    鯨が水を飲み、馬が草を食べるように、大量に飲み食いすること。豪快な食べっぷりを指すため、必ずしも悪い意味ではないが、健康の観点からは対極にある。

「腹八分目に医者いらず」の英語表現

英語圏でも、少食や軽い食事が健康につながるという格言があります。

Light suppers make long life.

  • 意味:「軽い夕食は長寿をつくる」
  • 解説:寝る前の食事を控えることは、現代のダイエットや健康法でも重要視されています。「腹八分目」の精神と共通する表現です。

Feed by measure and defy the physician.

  • 意味:「節度を持って食べ、医者を無視せよ(医者にかかるな)」
  • 解説:by measureは「適度に」「ほどほどに」という意味。後半のdefy the physicianが「医者いらず」とほぼ同じニュアンスを持ちます。

「腹八分目」に関する豆知識

「八分目」ってどれくらい?

「腹八分目」と言われても、具体的にどこで箸を止めればいいのか難しいものです。脳が「満腹だ」と感じる満腹中枢が働くには、食事開始から約20分かかると言われています。
つまり、食べている最中に「あ、お腹いっぱいだな」と感じた時には、すでに食べ過ぎ(十分目〜十二分目)になっていることが多いのです。

「もう少し食べられるけれど、お腹が落ち着いてきたな」と感じた時点で食事を終えると、20分後にはちょうど良い満腹感が訪れます。これが「八分目」の感覚です。

まとめ – 長く美味しく食べるための知恵

「腹八分目に医者いらず」は、食事を制限する苦しい修行の言葉ではありません。むしろ、一生涯、美味しいものを美味しく食べ続けるための知恵と言えます。

今日の食事から、あと一口を我慢して箸を置いてみる。その小さな積み重ねが、将来の健康という大きな財産になるかもしれません。

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