意味
「錦衣玉食」は、着るものと食べるものという二つの面から暮らしの豊かさを言い表した四字熟語です。
「錦衣玉食する」と動詞のようにも使い、財力にまかせた華やかな暮らしぶりそのものを指します。
- 錦衣(きんい):錦で仕立てた立派な衣服。
- 玉食(ぎょくしょく):珍しい材料を使ったぜいたくな食事。
語源・由来
「錦衣玉食」は、中国の歴史書『宋史』に出てくる言葉です。
北宋の文人蘇軾(そしょく)は、科挙の試験官を務めたときに弟子の李廌という文人を落としてしまい、あとでそれを悔やみました。
仲間に李廌を朝廷へ推そうと持ちかけた場面で、蘇軾は「李廌は山里に暮らしているが、その文章には錦衣玉食の気がある。すぐれた宝を道ばたに捨てておくようなものだ」と語っています。
ぜいたくな衣食の華やかさを、文章の豊かさをほめる言い方に転じて使った例です。
使い方・例文
「錦衣玉食」は、ありあまる富にまかせた衣食の暮らしぶりを言い表すときに使われます。
- 一代で財を築いた祖父は、晩年を錦衣玉食のうちに過ごした。
- 錦衣玉食に慣れた身には、寮の食事はさぞこたえるだろう。
- 質素を通した人で、錦衣玉食とはまるで縁のない一生だった。
小説に出てくる場面
『火の柱』(木下尚江)
世界でもっとも気の毒な人物としてロシア皇帝を挙げ、その境遇を語る場面に「錦衣玉食」が出てきます。
世界のもっとも気の毒なるもの恐らくは露西亜皇帝ならん、彼は囚人なり、ただ錦衣玉食するに過ぎず
類義語・関連語
「錦衣玉食」と同じように、衣食に何の不足もない暮らしを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 飽食暖衣(ほうしょくだんい):
着るものや食べるものに何の不足もない満ち足りた生活。 - 美衣美食(びいびしょく):
美しい衣服を着て、うまいものを食べること。 - 酒池肉林(しゅちにくりん):
贅沢の限りを尽くした、盛大な酒宴のこと。
「錦衣玉食」と「美衣美食」の違い
「錦衣玉食」と「美衣美食」は、どちらも上等な衣服と食事に恵まれた暮らしを表し、意味はほとんど重なります。
「錦衣玉食」は錦や玉にたとえて贅沢の程度を強調し、「美衣美食」は美しい衣服とうまい食事とそのまま言い表します。
| 語句 | 言い表し方 |
|---|---|
| 錦衣玉食 (きんいぎょくしょく) | 錦や玉にたとえた最上級の贅沢 |
| 美衣美食 (びいびしょく) | 美しい衣服とうまい食事とそのまま言う言い方 |
対義語
「錦衣玉食」とは逆に、衣食を切り詰めた暮らしを表す言葉には以下のようなものがあります。
英語表現
live in the lap of luxury
ぜいたくのふところに抱かれて暮らす、という形で恵まれた生活ぶりを表す言い方。
He has lived in the lap of luxury since he sold the company.
(彼は会社を売ってから錦衣玉食の暮らしを送っています。)
live high on the hog
豚の背の上等な部位を食べる、という成り立ちから、金にあかせた暮らしを指すくだけた表現。
They were living high on the hog until the money ran out.
(お金が尽きるまで、彼らはぜいたくな暮らしをしていました。)
『魏書』常景伝に見える言葉
「錦衣玉食」は、中国の歴史書『魏書』常景伝にある「錦衣玉食、可頤其形」という一節に由来します。
「頤」は養う、大切に育てるという意味で、美しい衣服とすばらしい食事で身を養うことができる、というのがもとの文脈です。
暮らしぶりを表す四字熟語には、ほかにも衣を表す二字と食を表す二字を組み合わせた形があり、ぜいたくな側には「美衣美食」、切り詰めた側には「粗衣粗食」が置かれます。
その中で「錦衣玉食」が変わっているのは、豊かさの度合いを形容する言葉ではなく、錦と玉という素材の名前で示している点です。









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