意味
「千山万水」とは、山また山、川また川と幾重にも重なり続く、数多くの山と川という意味です。
目の前の眺めだけでなく、そこを越えていく道のりの遠さを表す場面でも使われ、「千山万水を越えて」「千山万水を隔てて」の形で用いられます。
読み方は「せんざんばんすい」で、「せんさんばんすい」とも読みます。
- 千山(せんざん):多くの山。
- 万水(ばんすい):多くの川。
語源・由来
「千山万水」は、中国の詩文で使われてきた四字の言い回しで、日本では漢詩のなかに姿を見せます。
一休宗純の漢詩集『狂雲集』(15世紀後半)の「百丈野狐」に、「千山万水野僧居、甲子今年五十余」と出てきます。
山また山、川また川の奥にある野の僧のすまい、年を数えれば今年で五十余り、という一節です。
唐の伝奇小説集『続玄怪録』にも、この言葉が出てきます。
「千」も「万」も実際の数ではなく、数の多さを表しています。
使い方・例文
「千山万水」は、遠く隔たった土地との距離や、長い旅路の険しさを表す場面で使われます。
- 千山万水を越えて、ようやく師の寺にたどり着いた。
- 故郷は千山万水の彼方で、便りだけが年に一度届く。
- 車窓に千山万水が続き、旅は三日目の朝を迎えた。
有吉佐和子の文章に登場する場面
『孟姜女考』(有吉佐和子)
中国の孟姜女伝説を取り上げた文章で、遠い道のりを歩いて夫を捜す若妻の話として使われています。
若妻が千山万水を越えて尋ね歩いて夫を探した物語としては、あまりにも夫の范杞梁がお粗末すぎる
類義語・関連語
「千山万水」と同じように、山や川に隔てられた遠さを表す言葉や、「千」と「万」を重ねて数の多さを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 山川万里(さんせんばんり):
山や川を隔てて、遠く離れていること。 - 千辛万苦(せんしんばんく):
数えきれないほどの苦労や困難を重ねること。
「千山万水」と「山川万里」の違い
どちらも山と川を並べて遠さを言い表す言葉で、旅路や隔たりを述べる文で入れ替えて使えます。
分かれるのは、言葉が指しているものが眺めそのものか、離れている状態かという点です。
| 語句 | 指しているもの |
|---|---|
| 千山万水 (せんざんばんすい) | 重なり続く山と川の眺め |
| 山川万里 (さんせんばんり) | 山や川に隔てられた遠さ |
英語表現
over hill and dale
丘を越え谷を越えて土地のあちこちを進むさまを表す言い方。
They travelled over hill and dale to reach the old temple.
(彼らは山や谷を越えて古い寺までたどり着きました。)
同じ名を持つ明治の紀行文集
「千山万水」は、本の題名としても使われています。
明治32年(1899年)に刊行された大橋乙羽の紀行文集で、奈良や京都の古都、木曽路、奥の細道、江ノ島など、国内各地への旅行記をまとめたものです。
翌年には続編も出ました。
大橋乙羽には欧米を回った記録『欧山米水』もあり、この二冊が紀行文の代表作とされています。
「欧」と「米」をそれぞれ山と水に配した『欧山米水』は、国内を巡った『千山万水』と対をなす題になっています。









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