意味
「一路平安」とは、中国語で「道中ご無事で」にあたる言い方を、そのまま四字に写した言葉です。
日本語では、これから旅に出る人が道中ぶじに過ごせるようにと祈って贈る挨拶の言葉として使われます。
別れぎわの挨拶としては、「道中ご無事で、ごきげんよう」にあたる言い方です。
- 一路(いちろ):ひとすじに続く道。
- 平安(へいあん):無事でおだやかなこと。
語源・由来
「一路平安」は、中国の小説『紅楼夢』にも出てくる言い回しです。
第十四回には、旅に出た身内の安否を気づかう場面で、使いに戻った者を夜になってから呼び入れ、「細かに一路平安の知らせを問う」という一節があります。
ここでの「一路平安」は送り出すときの挨拶ではなく、道中が無事だったかどうかという知らせそのものを指しています。
使い方・例文
「一路平安」は、旅立つ人を送り出す場面や、その道中の無事を願う気持ちを述べるときに使われます。
- 「一路平安」と手を振り、夜行列車に乗る友を見送った。
- 赴任地へ発つ夫に、妻は一路平安と書いた札を渡した。
- 港では一路平安を祈る人々が、船影を見送っていた。
小説での使用例
『城外』(小田嶽夫)
中国の町を離れる人物を、見送りに来た人々が送り出す場面で使われています。
「大人、再会再会」と口を揃えて言った。「一路平安なれかし」「多謝多謝」
類義語・関連語
「一路平安」と同じように、何事もなく穏やかであることを願う言葉には以下のようなものがあります。
- 平穏無事(へいおんぶじ):
変わったことが何も起こらず、穏やかに過ぎていく様子。 - 安穏無事(あんのんぶじ):
世の中が落ち着いていて、事件も事故も起こらない状態。 - 無病息災(むびょうそくさい):
病気にも災難にも遭わず、健康に過ごすこと。 - 旅は道連れ世は情け(たびはみちづれよはなさけ):
旅では連れが、世の中では互いの思いやりが支えになるという教え。
「一路平安」と「平穏無事」の違い
どちらも何事もない状態を言い表しますが、言葉を向ける先が違います。
「一路平安」はこれから旅に出る相手に向けて口にする言葉で、「平穏無事」は人でも家でも国でも、落ち着いている状態そのものを指します。
| 語句 | 向ける先 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 一路平安 (いちろへいあん) | これから旅立つ相手 | 見送りの場 |
| 平穏無事 (へいおんぶじ) | 状態そのもの | 日々の暮らしを振り返るとき |
英語表現
have a safe trip
旅立つ相手に道中の無事を願う、英語でもっとも一般的な言い方。
Have a safe trip, and call me when you get there.
(道中お気をつけて、着いたら連絡してください。)
bon voyage
フランス語から英語に入り、船旅や長い旅に出る人を送り出すときに使われる表現。
Everyone on the platform shouted Bon voyage as the train pulled away.
(列車が動き出すと、ホームにいた全員が「よい旅を」と叫びました。)
中国語で今も使う、旅立つ人への一言
「一路平安」は中国語の決まり文句がそのまま日本語に入った四字熟語で、「一路」は道中ずっと、「平安」は無事であることを表します。
二つの語を組み合わせて、旅立つ人に道中の無事を祈って掛ける言葉になっています。
現在の中国語でも、空港や駅で見送る際の挨拶として日常的に使われており、英語の「Have a safe trip」に近い働きをします。









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