意味
「命長ければ恥多し」とは、長生きをすると、その分だけ恥をかく機会も多くなるという意味のことわざです。書き手が自分の年齢や身の上について口にする形で使われることが多く、「長生きすれば恥多し」という言い方もされます。
- 命長し(いのちながし):寿命が長い。長生きである。
- 恥(はじ):人前で面目を失うこと。
語源・由来
「命長ければ恥多し」は、中国の『荘子』の天地という章にある、伝説の聖王堯のことばから生まれました。
堯が華という土地を訪れたとき、国境を守る役人が「長生きされますように、富まれますように、男の子に恵まれますように」と祝いのことばを述べます。
堯はその三つをどれも断り、「男の子が多ければ心配が多く、富めば用事が多く、長生きすれば恥をかくことが多い。この三つは徳を養うものではない」と答えました。
この「寿ければ則ち辱多し」のくだりが、このことわざのもとになっています。
使い方・例文
「命長ければ恥多し」は、年を重ねたせいできまり悪い思いをした場面で使われます。
- 若い頃の日記を娘に読まれた。命長ければ恥多しである。
- 退職の挨拶で言葉に詰まり、命長ければ恥多しと苦笑した。
- 孫に操作を教わりながら命長ければ恥多しだと祖父は言った。
随筆での使われ方
『徒然草』(兼好法師)
第七段で、人の寿命の長さについて述べたくだりに引かれています。長くても四十に足りないくらいで死ぬのが見苦しくない、という文が続きます。
いのちながければ辱おほし。長くとも四十にたらぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ
類義語・関連語
「命長ければ恥多し」と同じように、年を重ねたことときまり悪さを結び付けて言う言葉には以下のようなものがあります。
- 生き恥(いきはじ):
この世に生きているために受ける恥。 - 年寄りの冷や水(としよりのひやみず):
年寄りが年に合わない危なっかしいことをすること。 - 麒麟も老いては駑馬に劣る(きりんもおいてはどばにおとる):
すぐれた人も年を取れば凡人に及ばなくなること。
「命長ければ恥多し」と「年寄りの冷や水」の違い
どちらも年を取った人のきまり悪さに触れますが、目を向けている先が違います。
「命長ければ恥多し」は長く生きたこと自体で恥の数がふえるという話で、「年寄りの冷や水」は年に合わない行いをそのつど戒める言い方です。
| 語句 | 指すもの | 使う相手 |
|---|---|---|
| 命長ければ恥多し (いのちながければはじおおし) | 長生きに伴う恥の積み重なり | 自分について言うことが多い |
| 年寄りの冷や水 (としよりのひやみず) | 年に合わない一つ一つの行い | 他人をたしなめる |
堯を言い返した国境の役人
『荘子』のこの話には続きがあります。
祝いを断られた役人は、「はじめはあなたを聖人だと思っていましたが、いまはただの君子ですね」と言い返します。
そして、子が多ければそれぞれに仕事を与えればよく、富めば人に分ければよく、聖人ならば世を離れて雲に乗り去るのだから恥をかくこともない、と説きました。
堯があらためて教えを請おうとすると、役人は「お引き取りを」とだけ答えて立ち去ります。
ここまで含めると、恥ずかしいといって長生きを喜ばないのはこざかしい知恵で、かえって愚かなことだ、という意味になります。










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