意味
「盗人上戸」は、酒も甘い物もどちらも好んで口にする人を指す場合と、たくさん酒を飲んでも顔つきや態度に変化が出ない人を指す場合の、二つの意味を持つ四字熟語です。
同じ「上戸」でも、酒に加えて甘い物にまで手を伸ばす様子と、大酒を飲んでも顔色一つ変えない様子という、異なる二つの場面を表しています。
- 上戸(じょうご):酒に強く、たくさん飲める人。
語源・由来
「盗人上戸」のうち、大酒を飲んでも顔や態度に変化が出ない人を指す意味は、こっそり酒を盗み飲みしても気づかれない人になぞらえた言い方だという見方があります。もう一つの「酒と甘い物のどちらも好む人」という意味は、目の前にある飲み物や食べ物を何でも平らげてしまう様子から来ているとみられます。
「上戸」という言葉自体は、律令制の時代に家(戸)を大戸・上戸・中戸・下戸と等級分けし、婚礼の際に振る舞ってよい酒の量を等級ごとに定めた制度に由来します。酒を多く出せる上位の家が「上戸」、少ない量しか出せない家が「下戸」と呼ばれ、それがそのまま酒に強い人・弱い人を指す言葉として定着しました。
使い方・例文
「盗人上戸」は、酒の席でお酒と甘い物の両方を楽しむ人や、いくら飲んでも顔色一つ変えない人を評して使われます。
- 彼は甘い物も酒も好きな盗人上戸で、忘年会では両方に手を伸ばす。
- あんなに飲んだのに顔色一つ変えない、まさに盗人上戸だ。
泉鏡花の小説での使用
『婦系図』(泉鏡花)
登場人物が、人に隠れて物を食べたり飲んだりする者同士を指して、この言葉を使う場面があります。
「いずれ、何か隠喰さ、盗人上戸なら味方同士だ。」
類義語・関連語
「盗人上戸」のうち、酒と甘い物のどちらも好むという意味では、次の言葉も同じように使われます。
- 両刀遣い(りょうとうづかい):酒にも甘い物にも目がない人。
英語表現
hold your liquor
たくさん飲んでも酔った様子を見せない、酒に強い人を表す表現。
He can really hold his liquor — you’d never guess how much he’s had.
(彼は本当に酒に強く、どれだけ飲んだか分からないほど顔色一つ変えない。)
大酒飲みを「盗人」と呼んだ、もう一つの理由
「上戸」はもともと、701年の大宝律令で定められた家格の一つで、成人男性の人数によって家を「上戸」「中戸」「下戸」に分けたことに由来します。
婚礼などの祝いの席では家格に応じて振る舞われる酒の量にも差があり、上戸には多く、下戸にはわずかしか酒が与えられなかったとされています。
「盗人上戸」は、酔っても顔や様子に変化が出ない大酒飲みを指しますが、「盗人」という語が添えられた理由については、人の酒や金を当てにしてまで飲もうとする図々しさをたとえた、あるいは顔に出ないためいくらでも飲み続けてしまう様子をたとえた、といった説が唱えられていますが、定説と呼べるほど確定した理由は分かっていません。









コメント