意味
「薬石無効」は、手を尽くした治療のかいなく、命を救えなかったことを、訃報や弔辞であらたまって伝える四字熟語です。
日常の会話ではあまり使われず、新聞のお悔やみ欄のような改まった文章で目にすることが多く、同じ内容を「薬石効無し」と表記する場合もあります。
- 薬石(やくせき):病気を治すための、さまざまな薬や治療法。
語源・由来
「薬石無効」は、唐の第16代皇帝である宣宗が、譲位にあたって発した文書の中の言葉に由来するという説があります。
その文書には「薬石効なく、弥留斯に迫れり」、つまり薬や治療の効き目がなく、いよいよ危篤の状態に迫っているという一節があり、これが「薬石無効」の元になったとされています。
当時の皇帝であっても、当時最善とされた薬や治療を尽くした末に、それでも病には勝てないことがありました。
その現実を伝える言葉が、時代を経て日本語にも取り入れられ、人の死を知らせる場面で使われる四字熟語として定着しました。
使い方・例文
「薬石無効」は、闘病の末に亡くなったことを、あらたまった言葉で伝える場面で使われます。
- 長い闘病の末、薬石無効で息を引き取った。
- 薬石無効もむなしく、先代の社長が逝去した。
類義語・関連語
「薬石無効」と同じく、命の危うい状態に関わる言葉には、次のようなものがあります。
「薬石無効」と類義語の違い
いずれも命が危うい状態に関わる言葉ですが、指している時点が異なります。
「半死半生」や「虫の息」はまだ息があるうちの状態を表すのに対し、「薬石無効」は治療を尽くした末に亡くなったことを、あとから伝える言葉です。
| 語句 | 状態 | 使う時点 |
|---|---|---|
| 薬石無効 (やくせきむこう) | 治療を尽くした末の死 | 死を知らせたあと |
| 半死半生 (はんしはんしょう) | 生死の境をさまよう状態 | まだ息があるうち |
| 虫の息 (むしのいき) | 息がかすかに続く状態 | まだ息があるうち |
腹に抱いた一つの石
「薬石」という二文字には、治療とは別のもう一つの意味があります。
禅宗の寺では、正午を過ぎると食事をとらない戒律があり、僧たちは空腹と寒さをしのぐために、温めた石を布に包んで腹に抱きました。
この温石がやがて「薬石」と呼ばれ、後には温石の代わりに出される夜の粥や食事そのものを指す言葉にもなりました。
同じ「薬石」の字が、一方では病を治す薬や治療を意味し、もう一方では戒律を守るために腹を温めた石を意味するという、二つの離れた由来を持っています。









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