意味
「悪運が強い(あくうんがつよい)」とは、後ろ暗いことをしておきながら、罰を受けずに切り抜けてしまうという意味です。
本来は悪いことをした本人について言う言葉で、運の強さに驚くという形をとりながら、その人の行いを責めている点に特徴があります。
俗に、事故や災難からうまく逃れることを指す使い方も広まっていますが、災難を切り抜けた人をほめる言い方としては誤解を招きます。
語源・由来
「運」はめぐり合わせのことですが、「悪運が強い」という言い方での「悪」はめぐり合わせのほうではなく、それを受け取る人の行いを指しています。
悪事をはたらいた者にさえ味方するほど運が強い、という見方から生まれた言い方です。
「悪い運が強い」と読むと「不運がひどい」という正反対の意味になってしまいますが、この言い回しの「強い」は、あくまで本人を守っている運の大きさを表しています。
使い方・例文
「悪運が強い」の形で使われ、「悪運が弱い」という言い方はしません。
- 何度摘発されても営業を続けている。悪運が強い男だ。
- 談合の首謀者が一人だけ不問とは、悪運が強い。
- 三度の不祥事を切り抜けた社長の悪運の強さには驚く。
災難を切り抜けた人に使うと失礼になる
事故や病気から生還した人に「悪運が強いですね」と言うと、本来の意味では「悪いことをしたのに罰を免れましたね」と伝えたことになります。
ほめるつもりなら「強運の持ち主ですね」「運が強いですね」が適切です。
文化庁の令和5年度「国語に関する世論調査」では、「悪運が強い」を「悪い状況になっても、うまく助かる様子」という意味だと答えた人が67.2パーセント、本来の「悪い行いをしたのに、報いを受けずにいる様子」と答えた人が24.3パーセントでした。
受け取る側の多くが「悪い行いをした」という含みに気づかないため、言った側の意図とずれたまま会話が進むこともあります。
類義語・関連語
この言葉と同じように、運やその報いをめぐる言葉には、以下のようなものがあります。
- 強運(きょううん):
運が強いこと。行いの善し悪しとは関わりなく使う。 - 九死に一生を得る(きゅうしにいっしょうをえる):
ほとんど助からないところを、かろうじて助かること。 - 悪銭身につかず(あくせんみにつかず):
不当に得た金は、とかく無駄に使ってしまうもの。
「悪運が強い」と「強運」の違い
どちらも運の強さを言う言葉なので入れ替えて使われがちですが、行いを問うかどうかが違います。
相手をほめたいときに選べるのは「強運」だけです。
| 語句 | 本人の行い | ほめ言葉になるか |
|---|---|---|
| 悪運が強い (あくうんがつよい) | 悪事をはたらいた前提 | ならない |
| 強運 (きょううん) | 問わない | なる |
対義語
悪事が報いを受けずに済むのとは反対に、必ず報いが来ることを表す言葉があります。
- 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):
天の網は目が粗いようでいて、悪事を見逃すことはないということ。 - 因果応報(いんがおうほう):
よい行いにはよい報いが、悪い行いには悪い報いがあること。
英語表現
英語では、次のような言い方が近い意味になります。
get away with it
悪いことをしながら、罰や責めを受けずに済むことを表す言い方。
He has cheated for years and always gets away with it.
(彼は何年もごまかしを続けているのに、一度もとがめられていません。)
「悪運」には正反対の意味が同居している
「悪運」という語は、「悪運が強い」のほかに「悪運続き」「悪運に泣く」という形でも使われます。
この「悪運続き」「悪運に泣く」の「悪運」は悪事とは関係がなく、ただの悪いめぐり合わせ、つまり不運のことです。
同じ二字が、一方では「運が悪い」、もう一方では「悪事をしても運に守られている」という、向きの違う意味を持っています。
令和5年度の調査で67.2パーセントが選んだ「悪い状況になっても、うまく助かる様子」は、そのどちらとも違います。
悪事をしたという前提が抜け落ち、不運でもない、三つめの意味です。










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