意味
「一飯千金(いっぱんせんきん)」とは、わずかな恩でも忘れず、厚く恩返しをするという意味です。
一度の食事の恵みを、千金に値する恩と考える組み立てになっています。
- 一飯(いっぱん):一度の食事。
- 千金(せんきん):多額のお金。
語源・由来
この言葉は、中国の歴史書『史記』の「淮陰侯列伝(= 漢の武将韓信の伝記)」にある、韓信の話が由来です。
貧しかった若いころの韓信は、人に食事を頼って暮らしていました。
城下で釣りをしていた韓信を見て、洗いものの仕事をしていた女性(= 漂母)の一人が、空腹なことに気づいて食事を出し、それが数十日続きました。
韓信が礼を言うと、漂母は次のように答えています。
信喜,謂漂母曰:『吾必有以重報母。』母怒曰:『大丈夫不能自食,吾哀王孫而進食,豈望報乎!』
(韓信は喜び、漂母に言った。「私はきっと、あなたに手厚くお返しします。」母は怒って言った。「立派な男が自分で食べていくこともできない。私は気の毒に思って食事を出したのです。お返しを望んだりするものですか。」)
のちに楚王(= 楚の国の王)となった韓信は、漂母のことを忘れていませんでした。
『史記』には、次のように記されています。
信至國,召所從食漂母,賜千金。
(韓信は国に着くと、かつて食事の世話になった漂母を呼び出し、千金を与えた。)
この「千金」を与えた話から、「一飯千金」の形で伝わりました。
使い方・例文
- 学生のころ食事をおごってくれた店主に、今は一飯千金の思いで通い続けている。
- 彼は一飯千金の人で、若いころ世話になった恩師の入院費を、黙って支えた。
- 一杯の味噌汁の礼に大きな贈り物を届けるとは、まさに一飯千金だ。
一飯千金の漂母と違い、亭長への礼は百銭
漂母に千金を与えた場面の続きには、亭長(= 地方の役人)への礼も出てきます。
若いころの韓信は、この亭長の家で数か月、食事の世話になっていました。
ところが亭長の妻が韓信を嫌がり、朝早くに食事を済ませて、韓信の分を用意しなくなりました。
韓信は怒って、亭長の家を去っています。
楚王になった韓信は、この亭長に百銭を与え、次のように言いました。
公,小人也,爲德不卒。
(あなたは小人だ。人に恵みを施しながら、最後までやり通さなかった。)
数十日のあいだ食事を出し続けた漂母には千金、途中で出すのをやめた亭長には百銭と、韓信は礼に差をつけています。
同じ場面で韓信は、かつて自分に股をくぐらせた若者を、中尉という役職に取り立てました。
この若者の話は韓信の股くぐりで紹介しています。


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