意味
「無常迅速(むじょうじんそく)」とは、世の中のあらゆるものが、きわめて速く移り変わっていくという意味です。
また、人の死が思いがけず早く訪れるという意味でも使います。
仏教の言葉で、「無常」は、万物が生まれては滅び、移り変わっていくことをいいます。
多く「生死事大(しょうじじだい)」と対にして使われます。
語源・由来
この言葉は、禅宗の書物『景徳伝燈録(= 禅僧の問答や伝記を集めた書物)』の巻五にも見えます。
北宋の道原がまとめた書物です。
巻五には、永嘉玄覚という禅僧が、禅宗の祖師である慧能大師を訪ねた場面があります。
慧能は、僧は三千の作法と八万の細かい行いを身につけるものだと述べ、「どこから来て、そんなに大きな慢心を起こすのか」ととがめました。
これに対する玄覚の答えが、次の一節です。
師曰:「生死事大無常迅速。」
(玄覚は言った。「生き死にの問題は重大で、世の移り変わりは速やかです。」)
使い方・例文
- 同級生の突然の訃報に、無常迅速という言葉を思い知らされた。
- 満開だった桜が一夜の雨で散り、無常迅速を感じた。
- 店の入れ替わりが激しい駅前を歩くと、無常迅速の思いが深まる。
類義語・関連語
「無常迅速」の二つの意味に、それぞれ近い語があります。
- 老少不定(ろうしょうふじょう):
人の寿命は老いた人から先に尽きるとは限らず、いつ死ぬか分からないこと。 - 諸行無常(しょぎょうむじょう):
世の中の一切のものは常に変化し、永久に変わらないものはないということ。仏教の根本主張の一つ。
「無常迅速」と類義語の違い
三語とも仏教の言葉で、人の世のはかなさを表します。
「無常迅速」は移り変わりの速さ、「老少不定」は死ぬ時が年齢の順とは限らないこと、「諸行無常」は変わらないものはないという考えに重心があります。
「無常迅速」を口にした玄覚は「一宿覚」と呼ばれた
玄覚の答えを聞いた慧能は、さらに問い返しました。
二人の問答は、次のように続きます。
祖曰:「何不體取無生了無速乎。」曰:「體即無生了本無速。」祖曰:「如是如是。」
(慧能は言った。「なぜ、生じることのない境地を体得し、速さなど無いと悟らないのか。」玄覚は答えた。「体得すれば、そのまま生じることのない境地であり、悟れば、もともと速さなど無いのです。」慧能は言った。「そのとおり、そのとおり。」)
玄覚は礼をして帰ろうとし、慧能に「帰るのが速すぎないか」と言われると、「もともと動いていないのだから、速いということがありましょうか」と返しました。
問答はさらに続き、慧能は「善哉善哉」(= すばらしい、すばらしい)と感嘆して、一晩泊まっていくよう勧めます。
このことから、当時の人は玄覚を一宿覚(= 一晩泊まった悟りの人)と呼んだと、同じ巻にあります。


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