勢いよく降る雪が積もる暇もなく溶けていったり、叱り飛ばしていた人が次の瞬間には優しく微笑んでいたりすることがあります。
最初は驚き身構えてしまうような出来事でも、実は実害がなかったり、すぐに収まったりするものです。
そんな、見かけほど恐ろしくない状況を、
「春の雪と叔母の杖は怖くない」(はるのゆきとおばのつえはこわくない)と言います。
意味・教訓
「春の雪と叔母の杖は怖くない」とは、一見すると恐ろしそうに見えるが、実際には大したことがなく、恐れるに足りないことのたとえです。
春先に降る雪は、冬の吹雪のように激しく見えることがあっても、地面に着いた端から溶けて消えてしまいます。
また、叔母が振り上げる杖によるお仕置きは、親の厳しさに比べれば手加減があり、ちっとも痛くないものです。
この二つを並べることで、一時的な騒ぎや見かけ倒しの脅威を表現しています。
- 春の雪:激しく降ってもすぐに溶ける。一時的な感情やトラブルの象徴。
- 叔母の杖:形だけは厳しいが、中身は優しい。形ばかりの叱責の象徴。
語源・由来
「春の雪と叔母の杖は怖くない」の由来は、日本の季節感と、古くからの家族関係にあります。
冬の雪は生活を脅かす「根雪」となりますが、春の雪は気温が高いため積もることがありません。
この「降るけれども積もらない」という性質が、一時的な怒りや実害のない災難に例えられました。
また、昔の家庭では父母が厳格なしつけ役を担う一方、叔母(あるいは叔父)は子供を甘やかし、親との間を取り持ってくれる優しい存在であることが一般的でした。
たとえ叔母が杖を振り上げて怒るポーズを見せても、そこには深い愛情や手加減があることを、当時の人々は経験的に知っていたのです。
使い方・例文
「春の雪と叔母の杖は怖くない」は、相手の怒りがすぐに収まることが分かっている場合や、表面的なトラブルを楽観視する際に使われます。
例文
- 部長の説教は派手だが、春の雪と叔母の杖は怖くないで、三十分もすれば忘れている。
- 威勢のいいライバル校の宣言も、我々からすれば春の雪と叔母の杖は怖くないといったところだ。
- 弟が泣いて抗議しているが、春の雪と叔母の杖は怖くないから、放っておけばすぐ泣き止むよ。
類義語・関連語
「春の雪と叔母の杖は怖くない」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 五月の鯉の吹き流し:
口は大きく開けているが、腹の中(中身)は何もないこと。 - 幽霊の正体見たり枯れ尾花:
恐ろしいと思っていたものの正体が、実は大したことのないものだったということ。 - 吠える犬は噛まぬ:
威勢よく騒ぎ立てる者ほど、実際には大した実力や実行力がないこと。 - 虚仮威し:
中身がないのに、外見だけを恐ろしげに見せて相手を威圧すること。
対義語
「春の雪と叔母の杖は怖くない」とは対照的に、油断できない状況を表す言葉です。
英語表現
「春の雪と叔母の杖は怖くない」を英語で表現する場合、以下の定型句がニュアンスに近いです。
His bark is worse than his bite.
「「彼の吠え声は、噛みつくよりもひどい」」
激しく吠える犬に限って実際には噛みつかないことから、口は悪いが実害はない人を指します。
- 例文:
Don’t worry about his anger; his bark is worse than his bite.
(彼の怒りなんて気にするな。春の雪と叔母の杖は怖くないようなものだ。)
知っておきたい豆知識:なぜ「叔母」なのか
このことわざで「叔母」が選ばれているのは、当時の親族関係において、母の姉妹(叔母)が母親代わりの慈愛を注ぐ立場であったことが関係しています。
反対に、厳しさの象徴としては「秋の日は釣瓶落とし」のように自然現象が使われることが多い中、あえて身近な親族を登場させることで、言葉に親しみやすさとユーモアを添えています。
まとめ
「春の雪と叔母の杖は怖くない」は、目の前の脅威に惑わされず、その本質を見極めることの大切さを教えてくれます。
一見すると激しい怒りや困難であっても、それが「積もらない雪」や「手加減のある杖」だと分かれば、心に余裕を持って対処できることでしょう。








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